「ソファですか?」と彼は言った。少し緊張しているようで、どことなく所在無さげに手の平を表にしたり裏返しにしたりしている。インタビューに慣れていないのだろう。しかし笑顔だけは絶やさずこちらを真っ直ぐに見てくれている。「そうですね、大小合わせて5つあります。結局座ってるのはいつも同じソファになりますけどね。てへぺろ」 てへぺろ、はもう死語なんじゃないかなと思ったが(死語という言葉こそ古いけど)、あえてそこは受け流すことにした。 「それでは最後の質問です」と僕は彼に向かって問い掛けた。月並みな質問だが訊かないわけにはいかない。てへぺろ何かに構ってる場合ではないのだ。「あなたはこの大事な家具たちがすべて燃えてしまったらどうしますか?」 「燃えてしまったら……」と彼は言い両腕を組んで首を傾けた。「……そうですね、かなり難しい質問だ。うん。まあ……ひと通り騒いだ後に罹災証明書を発行して、火災保険の申請をしますかね。多分。そしてコーヒーを買いに行く」 彼はコーヒーを買いに行くらしい。
「ソファですか?」と彼は言った。少し緊張しているようで、どことなく所在無さげに手の平を表にしたり裏返しにしたりしている。インタビューに慣れていないのだろう。しかし笑顔だけは絶やさずこちらを真っ直ぐに見てくれている。「そうですね、大小合わせて5つあります。結局座ってるのはいつも同じソファになりますけどね。てへぺろ」 てへぺろ、はもう死語なんじゃないかなと思ったが(死語という言葉こそ古いけど)、あえてそこは受け流すことにした。 「それでは最後の質問です」と僕は彼に向かって問い掛けた。月並みな質問だが訊かないわけにはいかない。てへぺろ何かに構ってる場合ではないのだ。「あなたはこの大事な家具たちがすべて燃えてしまったらどうしますか?」 「燃えてしまったら……」と彼は言い両腕を組んで首を傾けた。「……そうですね、かなり難しい質問だ。うん。まあ……ひと通り騒いだ後に罹災証明書を発行して、火災保険の申請をしますかね。多分。そしてコーヒーを買いに行く」 彼はコーヒーを買いに行くらしい。