猫とインテリア さて、物語はますます迷路の中へと。
Naoki.の部屋
27『お月様の月への手紙』 拝啓 しとしと、と雨の降る中、僕は少し遠くまで散歩に出かけることにしました。今のこの気持ちや思い何ていうものを、一体僕はどのようにどうやって表現して良いか分からない複雑な心境で、このままではこの狭い世界の中で息が詰まりそうになってしまうと思ったからです。この気持ちというのは閉所恐怖症の患者が、四畳半程度の部屋に無理矢理閉じ込められたときの心境と似ているかもしれません。もちろん、似ていないかもしれません。 傘を差さずに歩き、直接的に雨を浴びることでこのくだらない感情が浄化されることを期待していたのですが、身体がただ冷たくなり、靴の先がびっしょりと濡れるだけで、残念ながら何の解決にもならなそうです。むしろ余計に面倒な気持ちが顔を出し始めた気もしています。 すぐ横を走り抜けるバイクや車、わざと長靴で水たまりを歩きながら、水しぶきではしゃぐ子どもたち、彼らはその泥にまみれた水が、自分以外の誰かに当たることなんて想像すらしていないのでしょう。次々と僕のパンツや靴何かに容赦なく泥が撥ねていきます。いや、すみません。捉え方次第でこうも自分の心が蔑んでいくとは、僕もそのことには思い当たりませんでした。 これは、出来る限り早く自宅に帰って、温かいシャワーを浴びて、温かいコーヒーを飲んで、温かい猫たちを抱きかかえて、温かい毛布にくるまって、温かい夢を見ながら眠りについた方が良さそうです。 君の存在を求めることで得るものと、どうしたって得ることができないものとが浮き彫りになり、今こうやって自分自身の弱さと向き合うことになってるんだけど、これって答えがあると思いますか? 時間のすれ違いや気持ちのすれ違い、その他いろいろなことが、外交問題のように次々と浮かび上がり、そして次々と僕を悩ませる。でも、そうは言っても、そんなことは大して問題ではないよ、という気持ちも、後ろから声をかけてきます。 結局のところ、何が不安なのか、何で安心するのか、というのが見えてこないのです。 でもね、こんな鬱っぽい気持ちをただただ書き綴っているけれど、本当は、今のこの幸せのしっぺ返しを恐れているだけなのです。代償は払わなければならない。今日より幸せな日が来るはずがない。明日になんてなってほしくない。自己中心的な自分のわがままな気持ちなのです。 それでも僕は明日を生きなければならないし、眠りにつかなくてはいけません。 君が僕を想う気持ちと、僕が君を想う気持ちとを、細かく何分割かして、銀行か何処かに預けることができれば良いのだけど。そうすれば、いつでも好きなときに引き出せて、いつでも好きなときに幸せな気持ちを体験できるよね? 変かな? だって、この想いが一生担保されることはほとんど不可能に近いと思いませんか? それではまた手紙を書きます。次は幸せな出来事を綴れるように。 敬具 「――追伸、させてもらっていいかしら?」とソファの上で眠っていた彼女(猫)が声をかけてきた。 「あなたが鬱になるのは勝手だけど」と彼女(猫)は言った。「その迷惑な考えをなりふり構わず無償で周りに配り歩いていたら、知ってた? あの歴代続く独裁国家の代表と同じレベルなのよ」 手厳しいね、と僕は思った。
うちのコ(猫)とそっくり
@tanuko さん 是非アップしてください^ ^
猫とインテリア さて、物語はますます迷路の中へと。
27『お月様の月への手紙』 拝啓 しとしと、と雨の降る中、僕は少し遠くまで散歩に出かけることにしました。今のこの気持ちや思い何ていうものを、一体僕はどのようにどうやって表現して良いか分からない複雑な心境で、このままではこの狭い世界の中で息が詰まりそうになってしまうと思ったからです。この気持ちというのは閉所恐怖症の患者が、四畳半程度の部屋に無理矢理閉じ込められたときの心境と似ているかもしれません。もちろん、似ていないかもしれません。 傘を差さずに歩き、直接的に雨を浴びることでこのくだらない感情が浄化されることを期待していたのですが、身体がただ冷たくなり、靴の先がびっしょりと濡れるだけで、残念ながら何の解決にもならなそうです。むしろ余計に面倒な気持ちが顔を出し始めた気もしています。 すぐ横を走り抜けるバイクや車、わざと長靴で水たまりを歩きながら、水しぶきではしゃぐ子どもたち、彼らはその泥にまみれた水が、自分以外の誰かに当たることなんて想像すらしていないのでしょう。次々と僕のパンツや靴何かに容赦なく泥が撥ねていきます。いや、すみません。捉え方次第でこうも自分の心が蔑んでいくとは、僕もそのことには思い当たりませんでした。 これは、出来る限り早く自宅に帰って、温かいシャワーを浴びて、温かいコーヒーを飲んで、温かい猫たちを抱きかかえて、温かい毛布にくるまって、温かい夢を見ながら眠りについた方が良さそうです。 君の存在を求めることで得るものと、どうしたって得ることができないものとが浮き彫りになり、今こうやって自分自身の弱さと向き合うことになってるんだけど、これって答えがあると思いますか? 時間のすれ違いや気持ちのすれ違い、その他いろいろなことが、外交問題のように次々と浮かび上がり、そして次々と僕を悩ませる。でも、そうは言っても、そんなことは大して問題ではないよ、という気持ちも、後ろから声をかけてきます。 結局のところ、何が不安なのか、何で安心するのか、というのが見えてこないのです。 でもね、こんな鬱っぽい気持ちをただただ書き綴っているけれど、本当は、今のこの幸せのしっぺ返しを恐れているだけなのです。代償は払わなければならない。今日より幸せな日が来るはずがない。明日になんてなってほしくない。自己中心的な自分のわがままな気持ちなのです。 それでも僕は明日を生きなければならないし、眠りにつかなくてはいけません。 君が僕を想う気持ちと、僕が君を想う気持ちとを、細かく何分割かして、銀行か何処かに預けることができれば良いのだけど。そうすれば、いつでも好きなときに引き出せて、いつでも好きなときに幸せな気持ちを体験できるよね? 変かな? だって、この想いが一生担保されることはほとんど不可能に近いと思いませんか? それではまた手紙を書きます。次は幸せな出来事を綴れるように。 敬具 「――追伸、させてもらっていいかしら?」とソファの上で眠っていた彼女(猫)が声をかけてきた。 「あなたが鬱になるのは勝手だけど」と彼女(猫)は言った。「その迷惑な考えをなりふり構わず無償で周りに配り歩いていたら、知ってた? あの歴代続く独裁国家の代表と同じレベルなのよ」 手厳しいね、と僕は思った。
うちのコ(猫)とそっくり
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