物語は少々込み入ってきています。
Naoki.の部屋
25『お月様の月への手紙』 拝啓 話が通じるか通じないか、理由を説明しなければいけない人には、理由を伝えたってわかってもらえない。説明しなければいけないのなら、最初から説明する必要なんてない。そんな仕事を僕はしています。 突然そんなことを言われてもわからないかもしれないけど、おそらく君も同じような仕事をしていると記憶しているから、多くは語らなくてもわかってくれるのではないか、と期待しています。 でも、もしかしたらそれが間違いではないか、ということに今日思い当たりました。 君は疲れていてもなるべく笑顔を見せて、楽しかったこと、気に入らなかったこと、そういった今日あったことを話してくれます。 僕はそれを受け流すことはせず、少しでも何か糸口を見つけることはできないかと、真剣に話を聞いています。 本気で困っていることがあれば、何とかしたいと思うし、楽しかったことがあれば、その楽しさを僕も共有したいと思うから。 しかし、僕の誤算としては、“ただ話を聞いて欲しいだけ”、ということに思いあたらなかったこと。 いや、気づいていたのかもしれません。男性は原因を探る、女性は話したいから話す。 そんな根本的な部分をわかっていたつもりになっていました。 以前も同じようなことがあったよね。正直自分としてはニュアンス的に別問題だと考えていたんだけど、大きいカテゴリーの中では結局同じことだから、君はあんなに腹を立てたのではないかと今ならわかります。 「なんでそんなに嫌な気持ちにさせるの?」 僕は言葉を失いました。何も言い返せないし、何を言っても意味を持たせることができないと感じました。 それはまるで、ドアの無い部屋に閉じ込められたときのような絶望感。 それはまるで、最後の思いを伝えられなかったときのような悲壮感。 何が悪いとか、誰が悪いとか(もちろん僕なんだけど)、そんなレベルの話を続けている限りは、一生かかっても君の本当の思いや気持ちにたどり着くことなんてできないかもしれません。 でも僕は、一生かかってでも君の本当の気持ちや思いを、少しでも理解したいな、と考えています。 どちらが匙を投げるか、かもしれないけど。 少なくとも僕は。 笑顔が恋しいと思って、眠りにつくのは寂しいよね。 笑い合ったことを綴り続けることができれば良いのだけど。 それではまた、手紙を書きます。 敬具
物語は少々込み入ってきています。
25『お月様の月への手紙』 拝啓 話が通じるか通じないか、理由を説明しなければいけない人には、理由を伝えたってわかってもらえない。説明しなければいけないのなら、最初から説明する必要なんてない。そんな仕事を僕はしています。 突然そんなことを言われてもわからないかもしれないけど、おそらく君も同じような仕事をしていると記憶しているから、多くは語らなくてもわかってくれるのではないか、と期待しています。 でも、もしかしたらそれが間違いではないか、ということに今日思い当たりました。 君は疲れていてもなるべく笑顔を見せて、楽しかったこと、気に入らなかったこと、そういった今日あったことを話してくれます。 僕はそれを受け流すことはせず、少しでも何か糸口を見つけることはできないかと、真剣に話を聞いています。 本気で困っていることがあれば、何とかしたいと思うし、楽しかったことがあれば、その楽しさを僕も共有したいと思うから。 しかし、僕の誤算としては、“ただ話を聞いて欲しいだけ”、ということに思いあたらなかったこと。 いや、気づいていたのかもしれません。男性は原因を探る、女性は話したいから話す。 そんな根本的な部分をわかっていたつもりになっていました。 以前も同じようなことがあったよね。正直自分としてはニュアンス的に別問題だと考えていたんだけど、大きいカテゴリーの中では結局同じことだから、君はあんなに腹を立てたのではないかと今ならわかります。 「なんでそんなに嫌な気持ちにさせるの?」 僕は言葉を失いました。何も言い返せないし、何を言っても意味を持たせることができないと感じました。 それはまるで、ドアの無い部屋に閉じ込められたときのような絶望感。 それはまるで、最後の思いを伝えられなかったときのような悲壮感。 何が悪いとか、誰が悪いとか(もちろん僕なんだけど)、そんなレベルの話を続けている限りは、一生かかっても君の本当の思いや気持ちにたどり着くことなんてできないかもしれません。 でも僕は、一生かかってでも君の本当の気持ちや思いを、少しでも理解したいな、と考えています。 どちらが匙を投げるか、かもしれないけど。 少なくとも僕は。 笑顔が恋しいと思って、眠りにつくのは寂しいよね。 笑い合ったことを綴り続けることができれば良いのだけど。 それではまた、手紙を書きます。 敬具