雪の降らない町並みは、冬というより“寒い秋”という様相で、枯れてしまった街路樹は、要らない肉を削ぎ落とし来年に備えている名も無い骸骨のようだった。僕はコートのポケットに手を突っ込み、しばらく …続きを読む
Naoki.の部屋
雪の降らない町並みは、冬というより“寒い秋”という様相で、枯れてしまった街路樹は、要らない肉を削ぎ落とし来年に備えている名も無い骸骨のようだった。僕はコートのポケットに手を突っ込み、しばらくぷらぷらとその辺を散策する。冬の住宅街は静かだ。無音が支配しており、皆それぞれが固く鍵をかけ、片っ端から音を吸い取る機械が仕掛けられているみたいな錯覚に陥る。僕は何十人もの無口な人を集めた会議の光景を思い浮かべ、深く溜息をつく。そしてもちろんその音も吸い込まれていく。気がつくと、あの公園の入り口に立っていた。イソノさん(猫)を見かけたあの公園だ。「あら、お久しぶりね」僕は声の方を振り向いた。
雪の降らない町並みは、冬というより“寒い秋”という様相で、枯れてしまった街路樹は、要らない肉を削ぎ落とし来年に備えている名も無い骸骨のようだった。僕はコートのポケットに手を突っ込み、しばらくぷらぷらとその辺を散策する。冬の住宅街は静かだ。無音が支配しており、皆それぞれが固く鍵をかけ、片っ端から音を吸い取る機械が仕掛けられているみたいな錯覚に陥る。僕は何十人もの無口な人を集めた会議の光景を思い浮かべ、深く溜息をつく。そしてもちろんその音も吸い込まれていく。気がつくと、あの公園の入り口に立っていた。イソノさん(猫)を見かけたあの公園だ。「あら、お久しぶりね」僕は声の方を振り向いた。