Naoki.の部屋
雨を見るのは好き。限定。
朝僕は、しとしと、という雨の音で目が覚めた。いや、正確に言うとしとしとと降る雨が屋根をつたい、雨どいに溜まった雨水がそのまま流れてベランダを打つ音で目覚めた。ただ『しとしと』という表現を使いたかっただけなのだ。 『しとしと』という表現はとても良い。“物事をもの静かにするさま”という意味の通り、雨は音も無く地表に降り注いでいた。それは特殊なサインのように、気をつけていないとその存在自体も見逃しかねない静かさだった。まだ60%ほどしか覚醒していない頭をゆっくり起こすにはほど良く、向かいの家の庭のスギナやオヒシバが雨色に染まっていく様子を見ながら、僕は徐々に世の中に身体を慣らしていった。 「4分30秒ね」と彼女は言った。 「え? 何それ?」 何だろう。千五百メートル走のタイムか何かだろうか。 「だから、4分30秒よ」と彼女は繰り返した。「あなたが“うつしよ”に酔っている間に、ご飯の時間が4分30秒も過ぎているのよ! 何がしとしとよ、湿気でじとじとしてるわよむしろ」 うつしよ、だなんて何処で覚えたんだろう。 「正確には4分28秒です!」と彼は言った。彼に至っては数をかぞえることを覚えたみたいだ。こっそり公文を習い始めたのかもしれない。 ちょっとくらいいいじゃんかと僕は思ったが、そんなこと口にするとどうなるかなんて、火を見るより明らかだった(なんてわかりやすい比喩! 昔の人はすごいなあ)。 「はいはい」と僕は言った。「すぐ用意するからね」 「30秒、猶予をあげるわ」と彼女は言った。「じゃないとぺこぺこで痩せてしまうわ。お腹と背中がくっつくなんて良く言ったものね。昔の人はすごいわ、あなたと違って」 『しとしと』には、“おしとやかなさま”という意味もあることを、よほど彼女に対して言おうか迷ったが、結局僕は言わないことにした。
朔ちゃんが、公文。笑
@mittz さん そろそろ習う時期だと思うんです(・Д・)ノ
確かに! 張り切って行きそー笑
雨を見るのは好き。限定。
朝僕は、しとしと、という雨の音で目が覚めた。いや、正確に言うとしとしとと降る雨が屋根をつたい、雨どいに溜まった雨水がそのまま流れてベランダを打つ音で目覚めた。ただ『しとしと』という表現を使いたかっただけなのだ。 『しとしと』という表現はとても良い。“物事をもの静かにするさま”という意味の通り、雨は音も無く地表に降り注いでいた。それは特殊なサインのように、気をつけていないとその存在自体も見逃しかねない静かさだった。まだ60%ほどしか覚醒していない頭をゆっくり起こすにはほど良く、向かいの家の庭のスギナやオヒシバが雨色に染まっていく様子を見ながら、僕は徐々に世の中に身体を慣らしていった。 「4分30秒ね」と彼女は言った。 「え? 何それ?」 何だろう。千五百メートル走のタイムか何かだろうか。 「だから、4分30秒よ」と彼女は繰り返した。「あなたが“うつしよ”に酔っている間に、ご飯の時間が4分30秒も過ぎているのよ! 何がしとしとよ、湿気でじとじとしてるわよむしろ」 うつしよ、だなんて何処で覚えたんだろう。 「正確には4分28秒です!」と彼は言った。彼に至っては数をかぞえることを覚えたみたいだ。こっそり公文を習い始めたのかもしれない。 ちょっとくらいいいじゃんかと僕は思ったが、そんなこと口にするとどうなるかなんて、火を見るより明らかだった(なんてわかりやすい比喩! 昔の人はすごいなあ)。 「はいはい」と僕は言った。「すぐ用意するからね」 「30秒、猶予をあげるわ」と彼女は言った。「じゃないとぺこぺこで痩せてしまうわ。お腹と背中がくっつくなんて良く言ったものね。昔の人はすごいわ、あなたと違って」 『しとしと』には、“おしとやかなさま”という意味もあることを、よほど彼女に対して言おうか迷ったが、結局僕は言わないことにした。
朔ちゃんが、公文。笑
@mittz さん そろそろ習う時期だと思うんです(・Д・)ノ
確かに! 張り切って行きそー笑