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Naoki.
「おはようございます!」と彼は笑顔でベッドの上でまだ半分ほどしか目が開いていない状態の僕に言った。しかしその笑顔とは裏腹に、彼の目や仕草は何処となく所在無さげに見えた。それはまるでラッシュアワー時に慌てて電車に駆け込んだ場所が女性専用車両と気付いたときのような目だった。電車は既に動き始めていた為、次の駅に到着するまで「何この人? やあねえ」という、針のような視線を全身に浴びている様子の仕草だ(実話)。『駆け込み乗車はおやめください』とアナウンスは更に追い討ちをかける。 「今日は何をしたの?」と僕は彼に訊ねた。「え?!」「怒らないと思うから言ってごらん」「いや、あの、玄関の……」「玄関がどうしたの?」「玄関の臭いがしないのです!」と彼は言った。「おかしいです! だってあれだけトイレの砂をばらまいてるのに、臭いがしないのはおかしいです!」 臭い? いまいち状況がつかめない。「それはね朔ちゃん」と彼女は言った。「“タダ”という言葉に弱いこの人が、キャッチシューPROって名前の脱臭剤を置いてるからよ。無料だからって何でもかんでも貰うのよこの人。デパ地下の試食コーナー何かに行ったら1時間半は出て来ないわよ……いや、2時間だったかしら?」「ああ、そのことね」と僕は彼女のことは無視して言った。「あの脱臭剤すごいよね。あれだけ悩んでた臭いがまったくとは言わないまでも、ほとんどしなくなったんだからさ。……まあでもそんなことより」「ごはんですか!?」と彼は言った。「トイレの砂がどうとか聞こえたけど?」

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