眠れないときは彼の出番ですよね。
Naoki.の部屋
「もちろん」と彼(睡魔)は言った。「指一本あれば君のことを眠らせることはできるよ。そうだね、あとは何か手ごろな布と、熱々のコーヒーと、あそこの戸棚の中にあるシンプルなチョコレート•クッキーがあればね」 結局指一本だけでは無理なのかよ、と僕は思った。そして厚かましい。 「それはコーヒーを入れて欲しいということかな?」と僕は訊ねた。 彼は人差し指を立てて言った。「チョコレート•クッキーもね」 「コーヒーとチョコレート•クッキーがあれば、僕のことを眠らせてくれるんだね?」 「熱々の」と彼は訂正した。 「……熱々のコーヒーとチョコレート•クッキーがあれば僕のことを……」 「眠らせてあげるよ。うん、約束する。今日は特に他の予定も無いしね。他の予定があればまた話は変わってくるけど。予定が無いのに断るとそれはただの嫌な人になるからね。僕がそんな風に見えるかい? 見えないよね? 見えたとしたら……。やあミシェル、いつにも増して美猫さんだね」と彼はいつも通り適当なことを言いながら彼女(猫)に声をかけた。しかし、彼女は目線だけをこちらに向けただけで、すぐに目を閉じて眠ったふりをした。正解だ。彼の扱いに慣れている。彼は僕の方に向き直り両方の手の平を上に向け、西洋人のように肩をすくめた。そしてコーヒーはまだかな、という視線を向けながらニコっと微笑んだ。 「ああ、コーヒーだったね」と僕は言った。 「熱々の」と彼は訂正した。
眠れないときは彼の出番ですよね。
「もちろん」と彼(睡魔)は言った。「指一本あれば君のことを眠らせることはできるよ。そうだね、あとは何か手ごろな布と、熱々のコーヒーと、あそこの戸棚の中にあるシンプルなチョコレート•クッキーがあればね」 結局指一本だけでは無理なのかよ、と僕は思った。そして厚かましい。 「それはコーヒーを入れて欲しいということかな?」と僕は訊ねた。 彼は人差し指を立てて言った。「チョコレート•クッキーもね」 「コーヒーとチョコレート•クッキーがあれば、僕のことを眠らせてくれるんだね?」 「熱々の」と彼は訂正した。 「……熱々のコーヒーとチョコレート•クッキーがあれば僕のことを……」 「眠らせてあげるよ。うん、約束する。今日は特に他の予定も無いしね。他の予定があればまた話は変わってくるけど。予定が無いのに断るとそれはただの嫌な人になるからね。僕がそんな風に見えるかい? 見えないよね? 見えたとしたら……。やあミシェル、いつにも増して美猫さんだね」と彼はいつも通り適当なことを言いながら彼女(猫)に声をかけた。しかし、彼女は目線だけをこちらに向けただけで、すぐに目を閉じて眠ったふりをした。正解だ。彼の扱いに慣れている。彼は僕の方に向き直り両方の手の平を上に向け、西洋人のように肩をすくめた。そしてコーヒーはまだかな、という視線を向けながらニコっと微笑んだ。 「ああ、コーヒーだったね」と僕は言った。 「熱々の」と彼は訂正した。