Trend Forecast

トレンド予測

「RoomClip 住文化研究所」が
RoomClipのデータと
コミュニティを最大限活用し、
2023年の住まいと暮らしの
トレンドを大予測!
今後の暮らしはどのように変化を
していくのでしょうか。

2023 Trend Forecast2023年暮らしの予測

  • 01

    ととのう暮らし。
    ホームサウナ

    2010年代後半からのサウナブームはますます広がりをみせ、2022年はプライベートな貸し切り・個室サウナが話題となりました。そんな中、いよいよおうちサウナが盛り上がりの兆しありです。自宅の庭やテラスでのサウナテントの利用や、DIYのサウナ小屋、さらには家を作るタイミングでサウナ導入が注目されそうです。

    撮影 sakutaro さん
  • 02

    快眠の追求。一人一寝室

    快眠を求める動きは家づくり、間取りにまで及ぶ可能性がでてきています。寝室、ベッドまわりの投稿のネガティブなワードを分析すると、一緒に寝ている人から受けるストレス「いびき」「体感温度」などに言及されているケースが見られます。現在起こっている睡眠ブームの中で、寝具やベッド周りの環境にこだわりきった先には、一人一室寝室をもつ、という動きに繋がるかもしれません。

    撮影 rei88 さん
  • 03

    冷凍容量不足問題。
    セカンド冷凍庫

    まとめ買いトレンドが進む中、食品の買い物の頻度を減らし一度に買う量を増やす傾向のボトルネックは、冷凍庫の容量不足です。2020年から徐々に話題に上がるようになってきた「セカンド冷凍庫」の導入や、あるいは冷蔵庫と冷凍庫の比率が異なる「冷凍庫の大きい冷蔵庫」に注目が集まりそうです。

    撮影 blanc_clip さん

Summary 総まとめ

時短効率化の局面は「名もなき家事」「低頻度ルーティン」「住まい作り」へ

多様化したライフスタイルに合わせた暮らしの基盤作り、家事の時短効率化は新しい局面に突入しています。2010年代中盤から活発に行われてきた家事の時短・効率化は、毎日の掃除、洗濯、炊事といった主要なノウハウの蓄積を終え、より細かなところへ焦点を移しています。とりわけ顕著なのは「名もなき家事と呼ばれるような細かな家事の改善」「週一、月一と頻度の低い家事の改善」「住まいの間取りや設備への反映」の3点でした。
細かな家事の改善のポイントは、すでに改善の対象になっているような主要な家事の流れからはみ出る部分に発生していました。例えば、食洗機に対応しておらず他の食器洗いのルーティンに乗らない食器を洗う家事は、時短効率化の流れから取り残された存在でした。今回受賞した「ワイドジャグボトルスタンド」は、そんな家事を改善するアイテムで、水筒を洗うという家事にフォーカスしたものとして注目を浴び、多くの家庭に支持されました。他にも乾燥機にかけられない洗濯物や、ロボット掃除機がいけないエリアの掃除といった家事をどうするか、というテーマが挙げられます。
また、毎日しない頻度の低い家事、週一回や月一回行われる家事の改善も射程に入るようになっています。例えば、トイレ掃除やまな板の除菌漂白、給湯器の洗浄といったものです。今回受賞した「DRY HEAT」も、そんな長期スパンルーティンであるふとん乾燥のシーンで活躍するアイテムでした。毎日やる家事に比べて試行回数が少ないため改善が後回しにされていた家事が、いよいよ改善の対象となったといえます。さらに、新しい家事のルーティンは、それを前提とした住まいの間取りや設備選びにまで発展しています。「洗う」「干す」「仕舞う」といった洗濯の工程をひと部屋にまとめた「ランドリールーム」や、掃除のしやすさを重視したトイレ作りでよくみる「壁掛けのトイレ」、ロボット掃除機を採用する前提で作られる「ロボット掃除機の基地」といった設えが代表的な例です。
思えば、時短効率化ノウハウを駆使しなければ、普通に整った暮らしを維持できない、努力と工夫をしなければ破綻する、そんな状況が当たり前になっていたのではないでしょうか。その状況を生み出していたのは、住まいと現代の多様化したライフスタイルのズレでした。そのズレを埋めるべく生まれてきたものがノウハウであり、ズレそのものを修正していくのが、住まいの間取りや設備への反映とも言えます。

おひとりさま、ひとり時間は、暮らしの中へ

並行して起こったこととして挙げられるのが暮らしの中での豊かさ、喜びを推進する活動です。コロナ禍においては、おうちカフェや宅トレ、おうちキャンプなど、屋外での活動を家のなかで行うおうち系トレンドが多数発生しました。コロナ禍3年目になり、延長線上に発生した発生したのが「おひとりさま・ひとり時間のおうち化」です。単身層がイエナカのひとり時間を充実させていく中で、ファミリー層の間でも「少しでも家事を早く終わらせて休みたい、寝たい」という願望が顕在化したトレンドが「パーソナルな癒し」であり、「睡眠」でした。総務省統計局の令和3年社会生活基本調査によると、この5年で「休養・くつろぎ」と「睡眠」に充てる時間が増加したというデータもでています。ひとり時間の増加に合わせて、専用の空間を改善していく動きが「パーソナル癒しスペース」や「快眠ベッドルーム」「ヌック」であり、さらに「一人一寝室」や「ホームサウナ」などにつながっていくというわけです。

プチプラとハイプラが担う役割

この時代にプチプラのグッズが重要な役割を担いました。プチプラは安いことそのものに注目されがちですが、それだけではありませんでした。正解が分からず失敗する可能性があったり、試行錯誤していたりするシーンに用いられたのです。より良い方法を求め買い替えや買い増し、あるいは商品をベースにしてリメイク加工することも視野にあるわけです。そうした試行錯誤の末、前述したような新しい家事のやり方、あるいは部屋のスタイル・レイアウト、収納の方法、趣味のための工夫、そういったカテゴリの多様なライフスタイルに対して、確立されたノウハウが生まれていきました。「植物のある暮らし」と検索すれば、緑に囲まれた素敵な部屋の写真とともに、それを成立させるためのノウハウにすぐに辿り付くことができるでしょう。さらに、一旦ノウハウが確立された主題において、つまり正解がわかっている状態になった時に起こった変化が、ハイプラ買いです。失敗しないことがわかっている状態において、いいものを厳選して使った方がよいという判断に加え、コロナ禍のイエナカ消費ニーズ、さらに二次流通市場の成熟がリスクヘッジになっていることも抜け目がありません。

2020年代の住まいと暮らし

2020年代の主題は、多様化したライフスタイルに寄り添った住まい作りです。住まいとライフスタイルのズレを努力と工夫で埋めるのではなく、あるいは破綻に目を背けることなく、普通に暮らせる住まい作りです。かつて「住まいは3回建てて、初めて満足いくものができる」と言われていたそうですが、今は、上の世代がSNS上に残した万単位の住まい作りのエビデンスの上に、新しい住まい作りを始めることができ、さらにその記録が下の世代のための礎になっていきます。すでに成功したとみる事例もちらほらと。日本の住文化が動く10年になる予感を感じて、研究者としても、生活者としても嬉しく思っています。

RoomClip住文化研究所 主任研究員 水上淳史