外に出るとあっという間に霧に包まれた。今頃何処でどうしているのだろう。僕は、タバコに火をつけ、大きく煙を吸い込み、吐き出す。“猫は夜行性”と聞いている。しかし、“午前4時は、世界が眠る”山中さんはそう言っていた。もう午前3時40分に差し掛かろうとしていた。そして、ポケットからキーを取り出し、車のドアを開け、イグニッション・キーを回す。この一ヶ月間、一通り山中さんの行動範囲を車若しくは徒歩でくまなく回ってみたが、結局見つけることはできなかった。見つけた物といえば、カティ•サークの瓶ただひとつだけ。僕は、今日はもう諦めてコンビニエンスストアに立ち寄り、缶コーヒーとタバコを持ち、レジに並んだ。深夜だというのに、レジは少し混んでいた。やる気のなさそうな店員二人が、二つあるレジそれぞれに立ち、一人一人客を捌いていた。それは、二匹の猿がお互いに向き合って、片方がひたすら無機質に相手のノミを取っている光景のようだった。バーコードを打ち、値段を読み上げる。お金を貰い、お釣りを渡す。繰り返しだ。それ以上でもそれ以下でもない、ひたすら無機質に繰り返す。そこに個性はない。そんなものは要らないとでも言うかのように。やがて自分の番になり、その無機質の中に取り込まれる。違ったことといえば、年齢確認のボタンを押したことだろうか。山中さんを探し、名前を呼ぶ。見つからず、悲観する。繰り返しなのだ。僕は、店を出たところの喫煙所で、買ったばかりのコーヒーを飲み干し、タバコに火をつけた。しかし、マールボロのタバコは、古本を一度バラバラに切り裂いて、腐葉土を混ぜ、またそれを巻き直したような味しかしなかった。_自宅に戻り、スウェットシャツに着替えた。僕はひどく喉が渇いていたので、キッチンでコップに水を入れ、一息に飲み干した。汗を半ダースほどかいたかのような乾きだった。洗面台に立ち、歯を一本一本丁寧に磨く。そして口をゆすぎ、もう半分水を飲む。やっとひと心地ついた。猫たちはというと、もう既に眠りについているようだった。僕は、布団に潜り込み、眠りにつくまで山中さんたちについて考えてみた。とても幸せそうな二人だ。しかし、何かについて考えようとすると、その何かは、駆け足で逃げていく。考えようとすればするほど、するりと袖の下をすり抜けていく。それ以上二人のことは思い浮かばなかった。潮時かもしれない。僕はそう思った。猫が短く「ニャ」と鳴く。そして、音も無く眠りが僕を連れ去った。
外に出るとあっという間に霧に包まれた。今頃何処でどうしているのだろう。僕は、タバコに火をつけ、大きく煙を吸い込み、吐き出す。“猫は夜行性”と聞いている。しかし、“午前4時は、世界が眠る”山中さんはそう言っていた。もう午前3時40分に差し掛かろうとしていた。そして、ポケットからキーを取り出し、車のドアを開け、イグニッション・キーを回す。この一ヶ月間、一通り山中さんの行動範囲を車若しくは徒歩でくまなく回ってみたが、結局見つけることはできなかった。見つけた物といえば、カティ•サークの瓶ただひとつだけ。僕は、今日はもう諦めてコンビニエンスストアに立ち寄り、缶コーヒーとタバコを持ち、レジに並んだ。深夜だというのに、レジは少し混んでいた。やる気のなさそうな店員二人が、二つあるレジそれぞれに立ち、一人一人客を捌いていた。それは、二匹の猿がお互いに向き合って、片方がひたすら無機質に相手のノミを取っている光景のようだった。バーコードを打ち、値段を読み上げる。お金を貰い、お釣りを渡す。繰り返しだ。それ以上でもそれ以下でもない、ひたすら無機質に繰り返す。そこに個性はない。そんなものは要らないとでも言うかのように。やがて自分の番になり、その無機質の中に取り込まれる。違ったことといえば、年齢確認のボタンを押したことだろうか。山中さんを探し、名前を呼ぶ。見つからず、悲観する。繰り返しなのだ。僕は、店を出たところの喫煙所で、買ったばかりのコーヒーを飲み干し、タバコに火をつけた。しかし、マールボロのタバコは、古本を一度バラバラに切り裂いて、腐葉土を混ぜ、またそれを巻き直したような味しかしなかった。_自宅に戻り、スウェットシャツに着替えた。僕はひどく喉が渇いていたので、キッチンでコップに水を入れ、一息に飲み干した。汗を半ダースほどかいたかのような乾きだった。洗面台に立ち、歯を一本一本丁寧に磨く。そして口をゆすぎ、もう半分水を飲む。やっとひと心地ついた。猫たちはというと、もう既に眠りについているようだった。僕は、布団に潜り込み、眠りにつくまで山中さんたちについて考えてみた。とても幸せそうな二人だ。しかし、何かについて考えようとすると、その何かは、駆け足で逃げていく。考えようとすればするほど、するりと袖の下をすり抜けていく。それ以上二人のことは思い浮かばなかった。潮時かもしれない。僕はそう思った。猫が短く「ニャ」と鳴く。そして、音も無く眠りが僕を連れ去った。
読んだ(笑)(笑)
@kiku さん さすが笑。ありがとうございます★
完結なんですね!また何か進展?があれば続きをよろしくお願いします(笑) 山中さんの行方、気になりますね‥
@emiemi さん そうなんです(´Д` )ひとまず完結★また山中さん見つけたら報告しますし、過去編も時間あるとき書きます!
山中さん。見つかりますように(。>д<)
@cafe-plage さん 猫は基本生活圏変えないのにね(´Д` )
会えると思います!!
@cafe-plage さん 会えたらアップしますね!
待ってます!
夕べは半分夢の中で完結編を読みました꒰´ ु-௰ू-॰`꒱⋆。 もしかしたら 今頃誰かの家の温かいベッドで寝てるのかも...?って思いたいなぁ♬ 実家で飼っていたネコはいつの間にか住み着いたんですが 実はふた区画奥の家で飼われていたらしいのです...3年くらい経ってたから知ったので 聞かなかった事にしましたʕु-̫͡-ʔु”
@saku さん わー、それは僕も聞かなかったことにします(´Д` )