ペリカン急須(小) - 志野/南蛮
1931年の陶房創設より80年以上続く京焼の窯元、 晋六窯(しんろくがま)さん。
現代表の祖父・辻晋六氏が1930年に京都市山科区に築窯したのが 始まりで、現在は左京区岩倉で製造・販売に加え陶芸教室も開いています。 祖父から受け継ぐ「民芸」の大らかさと素朴さ、そして京焼の優雅さを 併せ持った陶器の製作を心がけ、一つ一つ手作業でその時代時代に 受け継がれていく器を制作しています。
晋六窯さんの看板商品といえば『ペリカン急須R』【商標登録済】。
京焼で作られたこの急須は、注ぎ口がまるで鳥のペリカンのような 形をしています。以下、代表である京谷さんの弁。
「焙じ番茶が詰まって出にくくなるのを、
何とかスムーズに出せるように!」
との注文で、50年前にうちのおじいちゃんが考えた急須です。 番茶と言うのは葉が大きい!
お茶の出てくる穴が少ないと詰まるのは当たり前・・・
そこで、穴を沢山開けるには、口を大きくする。こうして誕生しました。
普通の急須は「つばくろ(つばめ)口」と言います。それに対して、大きな口はまるで「ペリカンみたいやな〜」と言うのでついた名前。50年前は、不恰好で変な急須だとあんまり売れなかったんです。。
急須の穴は一つ一つ傘の骨を加工した道具で200近く空けています。 胴を作り、蓋、取っ手、口・・・4つのパーツから成り立っています。
全てろくろを引いて手作業で作っています。
・志野釉(しのゆう)について
ひさごに用いられている志野釉は、他の釉薬はいろいろな原料を混ぜて色付けするのに対して、純粋な長石だけからなる釉薬です。
約60%が長石からなる花崗岩と少し色合いは似ており、乳白色を基調として、ほんのかすかに黒や褐色、赤のドットが入るのが特徴。
特別濃厚に施され、器全体に貫入(かんにゅう)や亀裂があり、茶渋などが入りやすく、使用前と後ではまったく表情が変わることから、お茶人には特に喜ばれたようです。
全体に細かく薄いヒビ模様が美しく、見た目にはごつごつしている気がしても、手に持ってみるとツルっとして、指に吸い付くような感触があります。
一見すると単純な色合いが、じっと眺めるほどに一か所として同じパターンがないことに気が付く、味わい深い釉です。