旅行記、最終話
Naoki.の部屋
出発が20分遅れたため、きっちり20分遅れでGK604便は成田空港に到着した。副機長はあれからひと言もアナウンスすることはなかった。 やっと成田かよ、と思ったがここからが長い。何せ飛行機に乗ってる時間より、電車で家に帰るまでの時間の方が明らかに長いのだ。それに……それに僕はあの例の陸上競技場みたいな合成ゴムの床を、ひたすら第二ターミナルに向かって歩かなければいけないことを考えるだけでうんざりだった。 合成ゴムはすべての音を吸収していた。かなりの人数が同じ方向に向かって同じように歩いているにもかかわらず、そこには何の音もしていなかった。キュッキュッという音もザッザッという音でさえもだ。キャリーバッグのがらがら音が聞こえないだけでも大したものだった。 色々考えてればあっという間に着くかなあと考えていたけれど、現在地を指す看板は、まだ半分くらいの場所を示していた。現在地なんてわざわざ表示するもんじゃない。「うへえ、まだここかよ」となるだけだ。「わあ、もうこんなに来たのか! あとちょっとやんかあ」なんて思うわけがない。 さて、猫は寂しい思いをしてるだろうか。 ぶつくさ言わずに早く帰らなければ、と僕は思った。
旅行記、最終話
出発が20分遅れたため、きっちり20分遅れでGK604便は成田空港に到着した。副機長はあれからひと言もアナウンスすることはなかった。 やっと成田かよ、と思ったがここからが長い。何せ飛行機に乗ってる時間より、電車で家に帰るまでの時間の方が明らかに長いのだ。それに……それに僕はあの例の陸上競技場みたいな合成ゴムの床を、ひたすら第二ターミナルに向かって歩かなければいけないことを考えるだけでうんざりだった。 合成ゴムはすべての音を吸収していた。かなりの人数が同じ方向に向かって同じように歩いているにもかかわらず、そこには何の音もしていなかった。キュッキュッという音もザッザッという音でさえもだ。キャリーバッグのがらがら音が聞こえないだけでも大したものだった。 色々考えてればあっという間に着くかなあと考えていたけれど、現在地を指す看板は、まだ半分くらいの場所を示していた。現在地なんてわざわざ表示するもんじゃない。「うへえ、まだここかよ」となるだけだ。「わあ、もうこんなに来たのか! あとちょっとやんかあ」なんて思うわけがない。 さて、猫は寂しい思いをしてるだろうか。 ぶつくさ言わずに早く帰らなければ、と僕は思った。