まだ完成していない宿の話
この場所には、まだ暖炉もサウナもありません。
ヒノキ風呂も、これからです。
けれど、不思議と「もういい」と思える夜があります。
音がない世界。
火もまだないのに、静けさだけがある。
空を見上げると、街では見えない星が広がっている。それは、「天の川」
ここは、父が残した家です。
大きな梁や柱は、今ではもう簡単には手に入らないものばかりです。
この場所を壊すこともできました。
新しく建てることもできました。
でも、残すことにしました。
理由はうまく説明できません。
ただ、ここにいると「時間」が違うと感じるからです。
今、この場所を宿として整えています。
暖炉やサウナ、ヒノキ風呂もこれから加わります。
けれど、それらは主役ではありません。
火があっても、なくても。
風呂があっても、なくても。
この場所には、すでに「夜があります」。
何もない時間が、少しだけ豊かに感じられる夜です。
この宿は、完成を目指していません。
作りながら、思い出している場所です。
もしこの空気に少しでも興味を持ってもらえたら、
これからの過程も見てもらえたら嬉しいです。