and CHAIR

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Naoki.さんの実例写真
昔の夢をよく見る。普段の生活においては遠く薄い記憶になりつつあっても、それを見た直後というのはしばしば僕を悩ませる。夢というのは何故こんなにも儚く切ないものなのだろう。それは何処に居ても一瞬で過去に引き戻してしまうタイムマシンのようだった。「クリスマスだというのに仕事かい?」「ああ、君か」彼はストライプシャツの上に黒いウールのベストを合わせ、ネイビーのスラックスに焦げ茶色の革靴を履き、足を組んで僕の目の前に座っていた。何処かで見たことがある格好だ。何処でだろう?「君は睡魔じゃないね」「さすが!もう分かってきたみたいだね」と彼は言って指をパチンと鳴らした。「それにしてもここのコーヒーはとても不味いね、鉛筆の芯の味がする。黒鉛が含まれてるのかな?」「新聞紙かもしれないよ」と僕は言った。「そうかインクの味か、やはり君と話してると面白いよ」僕はちっとも面白くない。なるほど、そうか分かった。気付いてしまった。それがいいかどうかは別として。「分かったよ君の正体が」「うん」「君は“僕”だね」「…そうだよ、前にも言ったと思うんだけどね」と彼は少し微笑んで答えた。面白くない筈だ。自分と話してたのか。道理で見たことある格好だ。“今日の自分の服装”じゃないか。「でも何故君が突然現れたのかが僕には分からないな」と僕は“僕”に言った。しかし“僕”はもう答えなかった。そしてそのまま前触れもなく消えてしまった。“僕は”僕に含まれてしまったのだろう。“それじゃあ”も“またね”も無かった。コーヒーカップからはまだ湯気がうっすらと立ち昇っていた。
昔の夢をよく見る。普段の生活においては遠く薄い記憶になりつつあっても、それを見た直後というのはしばしば僕を悩ませる。夢というのは何故こんなにも儚く切ないものなのだろう。それは何処に居ても一瞬で過去に引き戻してしまうタイムマシンのようだった。「クリスマスだというのに仕事かい?」「ああ、君か」彼はストライプシャツの上に黒いウールのベストを合わせ、ネイビーのスラックスに焦げ茶色の革靴を履き、足を組んで僕の目の前に座っていた。何処かで見たことがある格好だ。何処でだろう?「君は睡魔じゃないね」「さすが!もう分かってきたみたいだね」と彼は言って指をパチンと鳴らした。「それにしてもここのコーヒーはとても不味いね、鉛筆の芯の味がする。黒鉛が含まれてるのかな?」「新聞紙かもしれないよ」と僕は言った。「そうかインクの味か、やはり君と話してると面白いよ」僕はちっとも面白くない。なるほど、そうか分かった。気付いてしまった。それがいいかどうかは別として。「分かったよ君の正体が」「うん」「君は“僕”だね」「…そうだよ、前にも言ったと思うんだけどね」と彼は少し微笑んで答えた。面白くない筈だ。自分と話してたのか。道理で見たことある格好だ。“今日の自分の服装”じゃないか。「でも何故君が突然現れたのかが僕には分からないな」と僕は“僕”に言った。しかし“僕”はもう答えなかった。そしてそのまま前触れもなく消えてしまった。“僕は”僕に含まれてしまったのだろう。“それじゃあ”も“またね”も無かった。コーヒーカップからはまだ湯気がうっすらと立ち昇っていた。
Naoki.
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昔の夢をよく見る。普段の生活においては遠く薄い記憶になりつつあっても、それを見た直後というのはしばしば僕を悩ませる。夢というのは何故こんなにも儚く切ないものなのだろう。それは何処に居ても一瞬で過去に引き戻してしまうタイムマシンのようだった。「クリスマスだというのに仕事かい?」「ああ、君か」彼はストライプシャツの上に黒いウールのベストを合わせ、ネイビーのスラックスに焦げ茶色の革靴を履き、足を組んで僕の目の前に座っていた。何処かで見たことがある格好だ。何処でだろう?「君は睡魔じゃないね」「さすが!もう分かってきたみたいだね」と彼は言って指をパチンと鳴らした。「それにしてもここのコーヒーはとても不味いね、鉛筆の芯の味がする。黒鉛が含まれてるのかな?」「新聞紙かもしれないよ」と僕は言った。「そうかインクの味か、やはり君と話してると面白いよ」僕はちっとも面白くない。なるほど、そうか分かった。気付いてしまった。それがいいかどうかは別として。「分かったよ君の正体が」「うん」「君は“僕”だね」「…そうだよ、前にも言ったと思うんだけどね」と彼は少し微笑んで答えた。面白くない筈だ。自分と話してたのか。道理で見たことある格好だ。“今日の自分の服装”じゃないか。「でも何故君が突然現れたのかが僕には分からないな」と僕は“僕”に言った。しかし“僕”はもう答えなかった。そしてそのまま前触れもなく消えてしまった。“僕は”僕に含まれてしまったのだろう。“それじゃあ”も“またね”も無かった。コーヒーカップからはまだ湯気がうっすらと立ち昇っていた。
昔の夢をよく見る。普段の生活においては遠く薄い記憶になりつつあっても、それを見た直後というのはしばしば僕を悩ませる。夢というのは何故こんなにも儚く切ないものなのだろう。それは何処に居ても一瞬で過去に引き戻してしまうタイムマシンのようだった。「クリスマスだというのに仕事かい?」「ああ、君か」彼はストライプシャツの上に黒いウールのベストを合わせ、ネイビーのスラックスに焦げ茶色の革靴を履き、足を組んで僕の目の前に座っていた。何処かで見たことがある格好だ。何処でだろう?「君は睡魔じゃないね」「さすが!もう分かってきたみたいだね」と彼は言って指をパチンと鳴らした。「それにしてもここのコーヒーはとても不味いね、鉛筆の芯の味がする。黒鉛が含まれてるのかな?」「新聞紙かもしれないよ」と僕は言った。「そうかインクの味か、やはり君と話してると面白いよ」僕はちっとも面白くない。なるほど、そうか分かった。気付いてしまった。それがいいかどうかは別として。「分かったよ君の正体が」「うん」「君は“僕”だね」「…そうだよ、前にも言ったと思うんだけどね」と彼は少し微笑んで答えた。面白くない筈だ。自分と話してたのか。道理で見たことある格好だ。“今日の自分の服装”じゃないか。「でも何故君が突然現れたのかが僕には分からないな」と僕は“僕”に言った。しかし“僕”はもう答えなかった。そしてそのまま前触れもなく消えてしまった。“僕は”僕に含まれてしまったのだろう。“それじゃあ”も“またね”も無かった。コーヒーカップからはまだ湯気がうっすらと立ち昇っていた。
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