そのとき彼が何を考えていたかは僕にも分からない。ただやはり今になって思うことは、何かが彼に差し迫っていたこと。あの日僕はいつものように山中さん(猫)に会う為、例の寝床に向かっていた。最終電車は10分程前に僕の目の前を通過して行き、人々の気配も消え、周囲は程よく寝静まっていた。僕は上着のポケットからYESMOKEのタバコを取り出し、三くちほど吸ってから携帯灰皿の中でもみ消した「やあ、あんたか」その声は上の方から聞こえてくる。「匂いでわかったよ。今戻るとこだったから丁度良かったな」そう言って山中さんは屋根からブロック塀にひょいと降りてきて、僕に顔を見せた。
そのとき彼が何を考えていたかは僕にも分からない。ただやはり今になって思うことは、何かが彼に差し迫っていたこと。あの日僕はいつものように山中さん(猫)に会う為、例の寝床に向かっていた。最終電車は10分程前に僕の目の前を通過して行き、人々の気配も消え、周囲は程よく寝静まっていた。僕は上着のポケットからYESMOKEのタバコを取り出し、三くちほど吸ってから携帯灰皿の中でもみ消した「やあ、あんたか」その声は上の方から聞こえてくる。「匂いでわかったよ。今戻るとこだったから丁度良かったな」そう言って山中さんは屋根からブロック塀にひょいと降りてきて、僕に顔を見せた。