冬の空気は身体の芯まで音も無く入り込んできた。タバコを吸う為にポケットから手を出すことさえも躊躇う気温だったが、その寒さとは裏腹に、昨夜降った雪はトレーニング後の水分補給のように手際よく道路に染み込んでしまっており、太陽がキチンと機能していることを感じさせた。僕はレンタカーを近くの営業所に乗り捨てることにする。久しぶりに汽車に乗って目的地まで向かうことも悪くないなと思った。何せ空気はピンと張り詰め、空は薄い青色をしていたのだ。__宇和島駅に着くと、特急宇和海10号は水族館の巨大な“あんこう”のように静かにホームで佇んでいた。“それ”は深い湖のような沈黙の中にその身を置いている。僕はその姿を見ながら赤タマネギのサラダと卵のサンドウィッチ、そしてブラックコーヒーをキオスクで買い、その“あんこう”に乗り込んだ。やがて発車のベルが鳴り出し、それと同時に彼が現れた。
冬の空気は身体の芯まで音も無く入り込んできた。タバコを吸う為にポケットから手を出すことさえも躊躇う気温だったが、その寒さとは裏腹に、昨夜降った雪はトレーニング後の水分補給のように手際よく道路に染み込んでしまっており、太陽がキチンと機能していることを感じさせた。僕はレンタカーを近くの営業所に乗り捨てることにする。久しぶりに汽車に乗って目的地まで向かうことも悪くないなと思った。何せ空気はピンと張り詰め、空は薄い青色をしていたのだ。__宇和島駅に着くと、特急宇和海10号は水族館の巨大な“あんこう”のように静かにホームで佇んでいた。“それ”は深い湖のような沈黙の中にその身を置いている。僕はその姿を見ながら赤タマネギのサラダと卵のサンドウィッチ、そしてブラックコーヒーをキオスクで買い、その“あんこう”に乗り込んだ。やがて発車のベルが鳴り出し、それと同時に彼が現れた。