Trend Forecast 2024
2024年暮らしの予測
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01
節電、断熱の先にZEH
電気代の高騰がきっかけとなり、省エネと断熱への取り組みが進み、省エネ家電や高断熱建材を取り入れる動きが進みました。その延長線上で、発電設備、蓄電設備への関心も高まり、これらの設備を複合的に活用し、生活で消費するエネルギーよりも生み出すエネルギーが上回る住宅「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の話題も目にするようになってきました。電気代高騰に対する生活防衛の意識から生まれたこの流れは、サステナブルな住まいと暮らしへの関心へ広がっていきます。
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02
脱コロナで宅飲みから進化
ホームパーティ脱コロナで、一人であるいは家族で行われていた宅飲みが、ご近所さんや友人を招いてのホームパーティーへと進化を遂げる兆しが生まれています。コロナ禍で育まれたレシピやテーブルコーディネートなどの宅飲みノウハウがホームパーティーへと転用されることで、はじめから完成度の高いホームパーティーシーンが実現されています。ゲストルームを整える動きも並行して生まれており、外部から人を招く住まいのおもてなし系トレンドは、今後注目の動きとなりそうです。
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03
SNSにもシニア層の話題が
介護とインテリアの両立SNS誕生からおよそ20年が経ちました。当時からSNSを熱心に活用していた30代は、50代になっています。こういった世代のライフステージの変化に応じて、これまであまりSNSで話題に上がっていなかった、親の介護や自身の老後に関連する話題が上がるようになっています。その中で注目を集めているのが「介護とインテリアの両立」というテーマです。オーダーメイドや介護用品でない製品を活用するなどして、暮らしに馴染んだ介護の実現が目指されています。
Summary
総まとめ
生活防衛意識が推し進める、持続可能な暮らし
物価や光熱費の高騰からくる生活防衛意識が、節約や省エネ、断熱といった住まいと暮らしの見直しを促しました。買い物の習慣が見直され、冷暖房器具はより狭い範囲で少ない出力で済むものへと置き換えが進み、さらに効率をあげるため断熱対策が行われました。実のところ、SDGsというキーワードが定着するずっと前から、節約や省エネ、再利用(リサイクル、リメイク・リペア)、ゴミの削減、良いものを長く使う、などといった活動はすでに投稿がされていました。その背景にあったのは「ロハス」「スローライフ」「丁寧な暮らし」といった豊かなライフスタイルを目指したコンセプトです。ところが、2023年のこれら一連の動きは、豊かなライフスタイルに向けた活動として、ではなく、生活を防衛するための活動でした。より生活に直結した問題意識からくる圧倒的な当事者性が、持続可能な暮らしへのシフトを力強く推し進めています。
汎用から専用へ。細分化・深化する生活者のニーズ
汎用から専用の流れは、ノウハウ、製品、住まい、全てのポイントで進んでいます。ノウハウでは、汎用的な収納方法ではうまくいかない専用収納テクが注目され、製品では、スポットで使われる「スポット家電」、一人暮らし用の「パーソナル家電」など特定のシチュエーションや、特定の世帯に特化した家電に人気があつまりました。住まいでは、癒しやくつろぎに特化した「ヌック」、洗濯に特化した「ランドリールーム」、ゲームに特化した「ゲーミング部屋」、メイクと美容に特化した「パウダーコーナー」など、特定の機能や過ごし方に特化したコーナー、部屋への注目が高まっています。この変化を促している要因は、ライフスタイルの多様化に他なりません。価値観が多様化し、世帯構造が多様化する中で、住まいと暮らしのニーズが細分化され、それに合わせた豊かな住まいと暮らしの追求がますます進んでいます。
新しいライフステージの話題。シニアの暮らし
「親の介護」「老後の備え」さらには「孫」の話題がSNSでもあがるようになっています。内閣府によれば65歳以上のいる世帯は令和元年で全世帯の49.4%となりました。にもかかわらず、これまであまりSNSでシニア層の話題を見なかった理由は明確で、そのライフステージの世代のSNS利用率が低かったためです。SNS誕生からおよそ20年が経ち、当時からSNSを熱心に活用していた30代は、50代になっています。その世代によってSNSでは孫と豊かに暮らすための工夫や介護とインテリアの両立など新しいニーズが確認できるようになりつつあります。内閣府によると令和元年の日本人の健康寿命は男性が72歳、女性が75歳、平均寿命は男性が 81歳、女性が87歳で年々伸び続けています。50代に続く世代はより一層SNSの利用率が高く、そのことを踏まえれば、SNSで50代以降のライフステージの話題が増え続けていく構造であることは明白です。まだ顕在化していない新しいニーズが顕在化し、よりよい豊かな住まいと暮らしのソリューションにつながっていくでしょう。
“脱コロナ”の先に続く暮らしの兆し
“脱コロナ”で外出や旅行の機会が増え、住まいと暮らしの中でそれに対応する変化が起こり始めました。脱マスクからメイクスペースへの熱量が高まり、外出時のペットの世話のためのスマートテックが試され、明るいパワーを感じさせるようなカラフルなお部屋に注目が集まっています。今回アワードで取り上げなかった動きも多数確認できています。オフィス回帰など、コロナ前に巻き戻るかのような話題を聞く一方で、実態を見れば、当たり前にオンライン会議は継続されているなど、コロナ前のスタイルに戻るわけではさそうです。コロナ禍に培ったアセットとコロナ前のいいところ取りが、脱コロナのスタンスではないでしょうか。それは住まいと暮らし領域においても同様です。先に取り上げた社会背景の変化も相まって、これまでの蓄積の上に、新しい住まいと暮らしが続いていきます。
RoomClip住文化研究所 主任研究員
水上淳史
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