前編2

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Naoki.さんの実例写真
古びた2階建てアパート横のブロック塀に腰掛けた僕は、吸い終わったタバコを携帯灰皿に放り込み、2本目のタバコに火をつけた。アパートの集合ポストには、どの部屋も名前が記載されておらず、ダイレクトメールが乱雑に押し込まれている。そして、門のところには、大きく「シャトレー」と書いてあった。“古城”。今にも傾きそうで、からまったツタがその名前を体現しているようだった。僕はそれを、歩道橋に掲げられた意味のないスローガンを見るように、ただぼんやりと眺めていた。気が付くと、少しずつ街は動きだしていた。1日の始まりの空は、少し曇っていたが、それでも、隅々まで染み込んでいた夜の闇を、まるでビルの清掃員のように、丁寧に拭き取り、辺りを照らしていた街灯を、いつの間にか消してしまっていた。_今考えてみると、山中さん(猫)は、示唆していたのかもしれない。以前と比べ、孤独をより好む傾向にあり、訪れても不在の場合はままあった。話しをする際は、割に親密にしてくれていたのだが、会う機会は確実に減っていた。それが意図的なものなのか、たまたまだったのかは分からない。いつもご飯を用意している、近所の人とはどうだったのだろう。今はそのご飯の器すら置かれていない。山中さん(猫)は、確実に何処かへ行ってしまった。イソノさんとの別れ、午前4時の世界、僕は、“ いつかの公園に行かなければならない”、と思った。
古びた2階建てアパート横のブロック塀に腰掛けた僕は、吸い終わったタバコを携帯灰皿に放り込み、2本目のタバコに火をつけた。アパートの集合ポストには、どの部屋も名前が記載されておらず、ダイレクトメールが乱雑に押し込まれている。そして、門のところには、大きく「シャトレー」と書いてあった。“古城”。今にも傾きそうで、からまったツタがその名前を体現しているようだった。僕はそれを、歩道橋に掲げられた意味のないスローガンを見るように、ただぼんやりと眺めていた。気が付くと、少しずつ街は動きだしていた。1日の始まりの空は、少し曇っていたが、それでも、隅々まで染み込んでいた夜の闇を、まるでビルの清掃員のように、丁寧に拭き取り、辺りを照らしていた街灯を、いつの間にか消してしまっていた。_今考えてみると、山中さん(猫)は、示唆していたのかもしれない。以前と比べ、孤独をより好む傾向にあり、訪れても不在の場合はままあった。話しをする際は、割に親密にしてくれていたのだが、会う機会は確実に減っていた。それが意図的なものなのか、たまたまだったのかは分からない。いつもご飯を用意している、近所の人とはどうだったのだろう。今はそのご飯の器すら置かれていない。山中さん(猫)は、確実に何処かへ行ってしまった。イソノさんとの別れ、午前4時の世界、僕は、“ いつかの公園に行かなければならない”、と思った。
Naoki.
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古びた2階建てアパート横のブロック塀に腰掛けた僕は、吸い終わったタバコを携帯灰皿に放り込み、2本目のタバコに火をつけた。アパートの集合ポストには、どの部屋も名前が記載されておらず、ダイレクトメールが乱雑に押し込まれている。そして、門のところには、大きく「シャトレー」と書いてあった。“古城”。今にも傾きそうで、からまったツタがその名前を体現しているようだった。僕はそれを、歩道橋に掲げられた意味のないスローガンを見るように、ただぼんやりと眺めていた。気が付くと、少しずつ街は動きだしていた。1日の始まりの空は、少し曇っていたが、それでも、隅々まで染み込んでいた夜の闇を、まるでビルの清掃員のように、丁寧に拭き取り、辺りを照らしていた街灯を、いつの間にか消してしまっていた。_今考えてみると、山中さん(猫)は、示唆していたのかもしれない。以前と比べ、孤独をより好む傾向にあり、訪れても不在の場合はままあった。話しをする際は、割に親密にしてくれていたのだが、会う機会は確実に減っていた。それが意図的なものなのか、たまたまだったのかは分からない。いつもご飯を用意している、近所の人とはどうだったのだろう。今はそのご飯の器すら置かれていない。山中さん(猫)は、確実に何処かへ行ってしまった。イソノさんとの別れ、午前4時の世界、僕は、“ いつかの公園に行かなければならない”、と思った。
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