オリジン弁当の本じゃないよ!

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「山中さん(猫)、知ってますか?こういう日を“狐の嫁入り”と云うんですよ」今日は朝からポツポツと、陽射しと合わせて雨が降っていた。傘をさすほどでもない。しかし確実に顔に当たる水滴に、通りを歩く女性たちは、化粧が落ちる心配をしているのか、遠いところを目視するように、おでこの辺りで手を翳している。いわゆる天気雨だ。彼女たちは、とても忌々しそうな顔で足早に歩いていた。「ほう、あんた若いのに詳しいな。わしの若い頃はーー」彼はいくつなのだろう。昔話をよく聞くが、僕にはわからないことが多い。ファービー人形を知っていたときは少なからず驚いたものだ。「わしが若い頃は、妖怪の仕業と云われててな。そりゃあ怖かったものだ」山中さん(猫)は、嬉しそうに話すとき、目を大きく見開きながら話す。それを見て僕も嬉しくなった。「さすが物知りですね。こんな嘘のような天気はやはりキツネに化かされてるんでしょうか?でも、なぜタヌキは話題にのぼらないんでしょう?化かすと云えばタヌキとキツネだと思うんですけどね」「おや?」山中さん(猫)は、さらに目を大きくし「あんたも知らないことがあるんだな」と言った。「“狸の嫁入り”という言葉も、もちろんある。狸の場合は、雨ではなく、雪だがな。じゃあ猪の場合は何が降ると思う?」山中さん(猫)は、小説に出てくる探偵のような顔をして、得意顔で僕に問いかけた。「うーん、あ、ボタン雪!」僕はそう答えて、山中さん(猫)の悔しそうな顔を尻目に、買い物があるのでまた、と言ってスーパーへ自転車を走らせた。「勝ち逃げか…」と後ろから聞こえた気がした。半袖では少し肌寒い、それは夏の終わりを知らせているようだった。
「山中さん(猫)、知ってますか?こういう日を“狐の嫁入り”と云うんですよ」今日は朝からポツポツと、陽射しと合わせて雨が降っていた。傘をさすほどでもない。しかし確実に顔に当たる水滴に、通りを歩く女性たちは、化粧が落ちる心配をしているのか、遠いところを目視するように、おでこの辺りで手を翳している。いわゆる天気雨だ。彼女たちは、とても忌々しそうな顔で足早に歩いていた。「ほう、あんた若いのに詳しいな。わしの若い頃はーー」彼はいくつなのだろう。昔話をよく聞くが、僕にはわからないことが多い。ファービー人形を知っていたときは少なからず驚いたものだ。「わしが若い頃は、妖怪の仕業と云われててな。そりゃあ怖かったものだ」山中さん(猫)は、嬉しそうに話すとき、目を大きく見開きながら話す。それを見て僕も嬉しくなった。「さすが物知りですね。こんな嘘のような天気はやはりキツネに化かされてるんでしょうか?でも、なぜタヌキは話題にのぼらないんでしょう?化かすと云えばタヌキとキツネだと思うんですけどね」「おや?」山中さん(猫)は、さらに目を大きくし「あんたも知らないことがあるんだな」と言った。「“狸の嫁入り”という言葉も、もちろんある。狸の場合は、雨ではなく、雪だがな。じゃあ猪の場合は何が降ると思う?」山中さん(猫)は、小説に出てくる探偵のような顔をして、得意顔で僕に問いかけた。「うーん、あ、ボタン雪!」僕はそう答えて、山中さん(猫)の悔しそうな顔を尻目に、買い物があるのでまた、と言ってスーパーへ自転車を走らせた。「勝ち逃げか…」と後ろから聞こえた気がした。半袖では少し肌寒い、それは夏の終わりを知らせているようだった。
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「山中さん(猫)、知ってますか?こういう日を“狐の嫁入り”と云うんですよ」今日は朝からポツポツと、陽射しと合わせて雨が降っていた。傘をさすほどでもない。しかし確実に顔に当たる水滴に、通りを歩く女性たちは、化粧が落ちる心配をしているのか、遠いところを目視するように、おでこの辺りで手を翳している。いわゆる天気雨だ。彼女たちは、とても忌々しそうな顔で足早に歩いていた。「ほう、あんた若いのに詳しいな。わしの若い頃はーー」彼はいくつなのだろう。昔話をよく聞くが、僕にはわからないことが多い。ファービー人形を知っていたときは少なからず驚いたものだ。「わしが若い頃は、妖怪の仕業と云われててな。そりゃあ怖かったものだ」山中さん(猫)は、嬉しそうに話すとき、目を大きく見開きながら話す。それを見て僕も嬉しくなった。「さすが物知りですね。こんな嘘のような天気はやはりキツネに化かされてるんでしょうか?でも、なぜタヌキは話題にのぼらないんでしょう?化かすと云えばタヌキとキツネだと思うんですけどね」「おや?」山中さん(猫)は、さらに目を大きくし「あんたも知らないことがあるんだな」と言った。「“狸の嫁入り”という言葉も、もちろんある。狸の場合は、雨ではなく、雪だがな。じゃあ猪の場合は何が降ると思う?」山中さん(猫)は、小説に出てくる探偵のような顔をして、得意顔で僕に問いかけた。「うーん、あ、ボタン雪!」僕はそう答えて、山中さん(猫)の悔しそうな顔を尻目に、買い物があるのでまた、と言ってスーパーへ自転車を走らせた。「勝ち逃げか…」と後ろから聞こえた気がした。半袖では少し肌寒い、それは夏の終わりを知らせているようだった。
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