その暗闇の奥

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Naoki.さんの実例写真
こたつでウトウトとしていると、ガサガサという音で現実に押し戻された。そのガサガサという音は、これまでに聞いたどのガサガサという音にも当てはまらなかった。(もし知っているガサガサなら目が覚めなかったかもしれない)「やあ」それはぼんやりとした輪郭だった。やがて色が付き始め、みるみる人の影が付き、最後にハッキリとその姿が現れた。睡魔だった。「やあ君か、こんにちは」と僕が言うと「こんばんは」と彼が時計を見ながら訂正した。「うん、確かにまあそうだね夜か」まだ少しぼんやりとしている。「でもウトウトしてるときに起こすなんてあんまりだよ。普通はそのまま連れてくもんじゃないのかい?」と僕は少し抗議した。「普通はね、しかし一応僕には僕のやり方があってね」と彼は言った。「つまりだ、そのまま連れていくと、君は僕の姿が見える数少ない相手なんだからさ、わかるだろ?」…そう言い放った彼に僕は深い溜息をつき「あのさ、君の退屈凌ぎに利用されちゃ堪らないよ。悪いんだけど早いとこ連れてってくれないかな」と言った。彼はまたいつもの西洋人みたいなジェスチャーで「そうしたいところなんだけどね、今日は先約があるんだ」と言い、テーブルの上に置いてあったピーナッツチョコレートをひとつ摘んでそのまま何処かへ消えてしまった。…僕は何が何だか訳が分からなかった。やはりあの男は好きになれない、と再認識した。そしてまた夜が明けようとしていた。
こたつでウトウトとしていると、ガサガサという音で現実に押し戻された。そのガサガサという音は、これまでに聞いたどのガサガサという音にも当てはまらなかった。(もし知っているガサガサなら目が覚めなかったかもしれない)「やあ」それはぼんやりとした輪郭だった。やがて色が付き始め、みるみる人の影が付き、最後にハッキリとその姿が現れた。睡魔だった。「やあ君か、こんにちは」と僕が言うと「こんばんは」と彼が時計を見ながら訂正した。「うん、確かにまあそうだね夜か」まだ少しぼんやりとしている。「でもウトウトしてるときに起こすなんてあんまりだよ。普通はそのまま連れてくもんじゃないのかい?」と僕は少し抗議した。「普通はね、しかし一応僕には僕のやり方があってね」と彼は言った。「つまりだ、そのまま連れていくと、君は僕の姿が見える数少ない相手なんだからさ、わかるだろ?」…そう言い放った彼に僕は深い溜息をつき「あのさ、君の退屈凌ぎに利用されちゃ堪らないよ。悪いんだけど早いとこ連れてってくれないかな」と言った。彼はまたいつもの西洋人みたいなジェスチャーで「そうしたいところなんだけどね、今日は先約があるんだ」と言い、テーブルの上に置いてあったピーナッツチョコレートをひとつ摘んでそのまま何処かへ消えてしまった。…僕は何が何だか訳が分からなかった。やはりあの男は好きになれない、と再認識した。そしてまた夜が明けようとしていた。
Naoki.
Naoki.
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