彼女(猫)たちが眠っている隙に、僕は風呂の掃除をすることにした。賃貸特有ともいえる窓のない風呂だ。換気扇と電灯のスイッチがひとつになっており、電灯を点けると換気扇が回り、換気扇を点けると電灯が灯る。不便だ。風呂上がりの湿気を取る為に、換気扇だけ回すというわけにもいかない。換気扇を掃除する為に電灯だけ灯す、というわけにもいかないのだ。僕は諦めて、石鹸を泡立て、まず浴槽を洗い、次に外側を洗った。最後に壁を洗い、シャワーで泡をスッカリ流した頃、気がつくと、風呂のドアの隙間に溜まった水を彼(猫)がうまそうに飲んでいた。「ここのお水は美味しいです!あなたも飲みませんか?」どう見ても衛生的とは言えない場所の水だが、どうして猫というのは好んでこういうとこの水を飲むのだろう。塩素が適度に抜けているからだろうか。それとも温度が程良く、飲みやすいのだろうか。もしかしたら、何か有機物のせいで“味がある、本当にうまい水”なのかもしれない。どちらにしても試すことはしないが。「あぁ、よく寝たわ。起きがけにはミルクがいいわね。洋猫用よ。間違えないでよ。あら、またお風呂の水を飲んでるの?物好きね。」前にミルクをあげたときに、洋猫と“幼猫”を間違えて覚えたみたいだ。成猫と伝えた場合は、どのように覚えるだろうか。今度やってみよう。彼女(猫)は、フフフンと鼻唄混じりに毛繕いをしている。僕は耳を澄ませてみたが、とうとう何の曲かわからなかった。恐らく、何の曲でもないのだろう。風呂掃除を終え、いまだに水を飲んでいる彼(猫)を抱きかかえ、僕はキッチンへと向かった。
彼女(猫)たちが眠っている隙に、僕は風呂の掃除をすることにした。賃貸特有ともいえる窓のない風呂だ。換気扇と電灯のスイッチがひとつになっており、電灯を点けると換気扇が回り、換気扇を点けると電灯が灯る。不便だ。風呂上がりの湿気を取る為に、換気扇だけ回すというわけにもいかない。換気扇を掃除する為に電灯だけ灯す、というわけにもいかないのだ。僕は諦めて、石鹸を泡立て、まず浴槽を洗い、次に外側を洗った。最後に壁を洗い、シャワーで泡をスッカリ流した頃、気がつくと、風呂のドアの隙間に溜まった水を彼(猫)がうまそうに飲んでいた。「ここのお水は美味しいです!あなたも飲みませんか?」どう見ても衛生的とは言えない場所の水だが、どうして猫というのは好んでこういうとこの水を飲むのだろう。塩素が適度に抜けているからだろうか。それとも温度が程良く、飲みやすいのだろうか。もしかしたら、何か有機物のせいで“味がある、本当にうまい水”なのかもしれない。どちらにしても試すことはしないが。「あぁ、よく寝たわ。起きがけにはミルクがいいわね。洋猫用よ。間違えないでよ。あら、またお風呂の水を飲んでるの?物好きね。」前にミルクをあげたときに、洋猫と“幼猫”を間違えて覚えたみたいだ。成猫と伝えた場合は、どのように覚えるだろうか。今度やってみよう。彼女(猫)は、フフフンと鼻唄混じりに毛繕いをしている。僕は耳を澄ませてみたが、とうとう何の曲かわからなかった。恐らく、何の曲でもないのだろう。風呂掃除を終え、いまだに水を飲んでいる彼(猫)を抱きかかえ、僕はキッチンへと向かった。