インテリア雑誌の編集者からみた「取材したくなる家」とは何か。
前編では人気ユーザーのこれまでの取材エピソードを振り返りました。後編では、RoomClipStyleの編集を担当してくれた扶桑社の池田さんが、編集者目線での「部屋づくりのコツ」について話してくれました。
(この記事は9月末に紀伊國屋書店新宿南口店で開催したトークライブの内容をまとめたものです)
ーーさて、今度は編集者から見て取材しやすい家について聞いていきます。池田さんはもう長くインテリアの取材をされていらっしゃるんですよね池田「そうですね。もう15年ぐらい編集者をやっています。一番最初は高校生向けのファッション誌の『Junie』っていう本でした。そのころはスマートフォンもブログもない時代です。じゃあ何を手がかりに取材先を見つけるかっていうと、口コミだったんですね。」
「おしゃれなショップ店長の家はおしゃれだろう、その人の友達の家もおしゃれだろうみたいな感じで、口コミで紹介してってもらって取材をしていたんです。その後、10年ぐらい前からESSEの編集を8年やりました。ESSEに移って最初の頃は、先ほどAtsushiさんが言ってたように設計事務所からの紹介とか、そこのホームページから物件を探して取材をしていました」
ーーおぉ、インテリア取材の変遷ですね。池田「そうそう。その後はだんだん皆さんがブログをするようになりました。おしゃれな人たちが自分達で発信してくれるようになっていって、とても取材がしやすくなったんです。」
「で、今に至っては、RoomClipがあって、おしゃれな人たちがどんどん出てきて探しやすくなっていますよね。編集者の目に触れること、チャンスが増えているので、どんどん、出たい人はどんどんアプローチしてほしいです」
ーーなるほど、アプローチするって言うのはどんな感じが一番ですか?池田「どんどん写真をアップして皆が見せたくないところまでアップしていただけると、目にとまるっていうのが一番大きいかなって思います。昔よりもチャンスがすごく増えているので」
ーーいいですねー。ただRoomClipは今それこそ写真が42万枚あるので、編集者の方はいろんな写真がある中でどういう写真が目に付くのか、どんな部屋が『これは取材したい』って思うのか、そのあたりについて教えて下さい。池田「3つまとめたので、まずはこちらを見て下さい」
池田
「ポイントの1つ目は、部屋の顔が一目で分かるということです。雑誌の編集者は、やはり大きく写真映えするお部屋を掲載したいと思っています。誰が見ても『このお家の中心はここである』ということが大切。生活スタイルや部屋の用途、家族構成までわかるメインの写真が撮れるお家を取材したいんです」
ーーなるほど。池田「お子さんの有無も雑誌によっては重要です。ESSEはやはりお子さんがいるファミリーの家を取材したいので、そういうところが見えてるお家が一番取材したいですね」
ーーバランスよく配置されていて、ぎゅっと写真に収める事ができる、つまり1枚の絵で伝わるというのが重要なのかなと思います。池田「そうですね、原稿を読まなくても写真一枚を見れば、その人のお家のことを全てわかるぐらいの家が理想です」
池田「これはRoomClipStyleで表紙にさせていただいたkumiさんのお宅です。kumiさんは子ども2人とご夫婦の4人家族。リビングに遊ぶスペースがあって、ソファが大きいので、家族が多いこともわかります。1枚にぎゅっと彼女のインテリアの好みまでも反映できています。DIYが好きなんだろうということまで分かる。こういうメッセージ性のある写真が撮れるお家が一番取材したい家ですね」
ーーなるほど。ちなみにこの2枚の写真アングルが違うという事なんですが、どういうことですか?池田「部屋の窓に向かっている写真と、奥に向かっている写真の2カット撮っているんですが、やはり前者の写真が良いんですよね。子供が楽しく遊べるように、子供がいるスペースを明るい方に取っているんです。それがよくわかる写真を表紙にしています」
ーーポイントの2番目にいきたいと思います。池田「2つ目は色調がまとまっているということです。雑誌は写真を何枚も組み合わせて掲載します。そのときに色やテイストがバラバラだと分かりにくくなってしまいますよね」
「popさんみたいなすごくセンスがいい方だと色んな色調を取り込めると思いますが、それはなかなか難しい。なので、色んな場所の写真を載せても一軒の家だということが分かる家を取材したいなと思っています」
「Orieさんのお宅はやっぱり揃っていますね。黒とカーキと茶色をベースにして、ゴム手袋も黒。すごくこだわりがあって、テーマがわかりやすい。どのコーナーを撮ってもOrieさんの家だって分かるんですよね。すごくメッセージ性が強いお宅だなって」
ーーOrieさんいかがですか?小物の色を統一しているといったあたりはやはり意識して作られたんですかOrieさん「意識してますね。部屋を作っていく中で『あ、この色好き』っていうのに気付いたんです。好きなモノを集めていくとやっぱり自然とこういう色になっていく。作るものも結局同じような色合いになっていったって感じです」
ーー今のテイストになってきたなっていうのはだいたいいつごろですか?Orieさん「今の家に引っ越してきてからですね。すごくボロい家なので、少しでも住んでいてテンションが上がるようにって思って始めたんです。始めて半年ぐらいしたら、部屋をなんとなく見ても『あ、可愛い』って思えるような家になったんです。その時にやっぱり色もそろってたんですね」
ーーじゃあポイントの3つ目に行こうと思います池田「フォーカルポイント、焦点があることですね。壁にポスターを貼ったり、戸棚の上に雑貨を飾ったり、部屋の奥に大きな観葉植物を置いたり。とにかく部屋に入った時に人の目を惹きつけるポイントを作るというのが重要です。写真を載せた時に紙面映えがするんですよね」
ーーある意味『キャラ立ち』している部屋ってことですよね。
池田「そうそう。たとえばこのpoti Mamaさんは棚の上に大きいバスロールサインを貼ってて、人の目を惹き付けますね。RoomClipStyleで巻頭特集をしたNatsumikanさんのお宅でも。」
「例えば壁にディスプレイをしている写真と、してない写真があったときに、やっぱりディスプレイのある写真の方が目をひくんです。やっぱり写真1枚で楽しませて、どの写真も楽しいっていうのが私達が雑誌を作るときに大事にしているところですね。
ーーなるほど。とこの写真はとても分かりやすいですね。
池田「まず間取りがすごく変わっている家は、参考にできる読者さんが減ってしまうんです。たとえば『私の家は一階は全部クローゼットにしてます。だから各部屋のクローゼットは無いんですよ』って言われちゃうと、なかなかそれは真似ができない。だからなかなか取材がしづらいんですね」
「同じように、部屋が広すぎるっていうのも参考できる人が減ってしまう。読者さんが『そんな広いからそりゃオシャレにできるでしょ』みたいに思われるので。だから家の広い方を取材する時は、狭そうに見える写真にさせていただいたりとか、撮影の時にダイニングテーブルを動かして、ギュッと固めて撮ったりとかよくやりますね。6LDKとか言われたら、3部屋は撮影しないとか(笑)」
ーーははは池田「それと最後にもうひとつ、暮らし方としてはとても素晴らしいんですけど、物が少なすぎるお宅って言うのは難しい。床とか壁とかに何にも無くて、間延びしてしまうので、インテリアの取材としてはちょっとつまらなく見えてしまうんです。おしゃれなのに取材しにくいお宅って言うのはこの3つですね」
ーーまさにカタログの写真とかはこういった写真が多いですよね。どかんと大きくて、めちゃめちゃ部屋が広く、撮りたい家具しかない部屋。逆に実際に人が生活している部屋になるは間逆になりますよね。池田「そうそう。やっぱり生活感って大事だなって思っていて、おしゃれなんだけど、暮らしてる感じがする写真が撮れるっていうことがすごく重要ですね。だから皆さんのお宅はおしゃれで暮らしもしっかりしている、暮らしも兼ね備わっているところが素晴らしいなって思ってます」
ーーはい、ということで今のお話を踏まえると、この3人の部屋がすごく取材しやすい部屋だというのがわかってきますね。本日はどうもありがとうございました!
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インテリア取材先探し、昔口コミ今スマホ



取材される部屋づくりのコツ①「部屋の顔」がすぐ分かる!


取材される部屋づくりのコツ②「色調がまとまっている!」

取材される部屋づくりのコツ③フォーカルポイントがある!


番外編:取材しにくいお部屋って?
ーーさて、最後に『おしゃれなのに取材しにくいお部屋』をまとめてきてくれたそうですが、何なんですかこれは(笑)池田「これ、面白いかなって思ってちょっと入れてみたんです(笑)」 ーー確かに参考になりそうですね
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