【今注目のジオラマモデラー】情景師/アラーキーさんのジオラマがあるお部屋インタビュー!①

【今注目のジオラマモデラー】情景師/アラーキーさんのジオラマがあるお部屋インタビュー!①

その作品が世界的に広く知られるジオラマのモデラー、情景師/荒木智さんのインタビューをお届けします。ジオラマというミニチュア仮想空間に表現される日本人の繊細さと緻密さ、そして、幼少期から憧れていた“特撮”の世界観。今回はそんな荒木さんのご自宅でお話をうかがってきました。12月からRoomClipで開催されている「ジオラマ・模型・プラモデル!ホビーなお部屋」の写真投稿コンテストを記念して全二回に分けて、貴重なインタビューをお届けします。

幼少期にハマっていた“箱庭”あそび

ー本日はよろしくお願い致します。早速ですが、荒木さんが“模型作り”や“ジオラマ”にハマったきっかけを教えてくれませんか。

幼少頃からプラモデルを作るのが大好きでしたね。幼稚園の時にはすでにカッターやハサミを使いながら色々と工作してましたね。大人になってから冷静に考えたら、けっこう危ないと思ったりもしますが、僕の両親はやらせてくたんです。僕ぐらいの世代は、子どもの頃にゴジラとかウルトラマンとか、所謂ミニチュア使った“特撮”を見てる世代なんです。だからもう自然と、そういう世界にハマっていきました。テレビゲームなんてものはない時代でしたから、外でスポーツをやったり、家でプラモデルを作ったりするのが、当時の男の子的な遊び方でした。

当時「将来は特撮の仕事をしたいなあ」なんて夢を抱きながら遊んでましたね。初めて“ジオラマ”という世界に触れたきっかけは“箱庭”なんです。幼稚園ぐらいにはもうそんな遊び方を始めていましたね。“箱庭”は、平安時代ぐらいから日本の貴族たちが楽しんでいた“あそび”だそうです。簡単に言えば、ジオラマの原型のようなもの。僕は、お菓子などの缶の蓋の上に土を敷いて、外で採ってきた石や苔、オモチャのミニカーを並べて、自分で考えたミニチュアの世界を作っていました。あの遊びは子どもながらにものすごく感動して、本当に面白かった。あの“あそび”が今に繋がっているんだと思います。

ジオラマが鑑賞できるリビング
▲ジオラマが鑑賞できるリビング

その後、どのようにジオラマと触れ合ってきたのか教えてください。

模型作りを本格的に始めたのは中学生になってからです。プラモデルはずっと作っていましたが、それまでは単に組み立てるだけ。中学生ぐらいからは、自分で塗装してみたり、改造してみたり、錆がついているような汚しを加えてみたり、そんなことを始めるようになりました。段々と技術がついてきたんですね。ある日、模型雑誌を見たら、ジオラマの作品がいっぱい載っていたんですよ。「これはすごい! 作ってみたい!!」と感化され、自分なりにジオラマ作りを始めるようになるんです。

大学に進学してからは工業デザインを勉強してました。その頃になると、オートバイにハマって、オートバイで日本一周したりしていましたね。大学卒業後は工業デザイナーとして働き始めたんです。進学と就職の時、小さい頃からの夢だった特撮の仕事に就きたかったんですが、色々考えて別の道に進むことを選びました。就職してからもオートバイで遊んでいることが多くて、しばらくジオラマからは完全に離れていましたね。

WALL・Eがリビングを見下ろしています!
▲WALL・Eがリビングを見下ろしています!

大人になってから本格的に始まったジオラマという趣味

なぜ再びジオラマを始めたんですか?

理由は仕事のデジタル化ですね。ちょうど工業デザインの現場がアナログ作業からデジタル作業に移行した時期でした。CGで絵を描いて、CGで設計して、CGで出力する。全部デジタルだから自分の手が全く汚れなくなってしまったんですよ。それまではずっとアナログで作業してきましたから、ものすごくつまらなく感じたんです。「自分の手を使って何か作りたい!」と思うようになりました。

それで中学高校の時に作っていたジオラマの部品を引っ張り出してきて、またジオラマを作るようになったんです。ちょうどジオラマのコンテストがあったので、出展してみることしました。それまではジオラマ作品を本格的に作ったことはありませんでしたが、ただ「こういうのが作りたい!」という気持ちがたくさんあったので、一生懸命作りましたね。そしたら、なんと僕の作品が大賞に選ばれてしまったんです。それが27歳の時。

こちらが受賞作品!
▲こちらが受賞作品!

すごいですね! それからもうジオラマ作りが始まるんですね?!

いえ。その時はそれで大満足して、またしばらく離れていました。本格的に始めたのは30歳をすぎてからになります。その頃はプラモデルメーカーさんも再び活気を取り戻してきていましたから、部品や道具を色々と買い漁るようになりました。子どもの頃はお小遣いを貯めても手が届かなかったですからね。「あれ? こんなに安かったっけ?」って(笑)。当時、インターネットが普及してきて「インターネットで友達を作る」という風潮が現れ始めた頃でした。とあるジオラマ関連のホームページに掲示板があったんですが、僕が少年時代に憧れていたモデラー(模型制作をやっている人たちの通称)の方たちが何人かいらっしゃったんです。その掲示板をちょこちょこ覗くようになりました。

で、あの日、僕がコンテストに出展した作品の写真を投稿したら、「あの作品を作ったのは君か?!」という話になりましてね。みんな僕が作った作品を知ってくれていたんですよ。嬉しかったですね。僕が憧れていた方たちと一遍に繋がれました。あの作品が名刺代わりになりました。それが10年ぐらい前の話です。そこからSNSのブームなんかも経て、一気に人の輪が広がっていきましたね。「雑誌で作品を掲載しませんか?」なんてご依頼もいただくようになりました。今年の夏には愛知県の博物館で、昭和の風景を集めたような展示会がありまして、そこに作品を出展させていただいたんです。その展示会をきっかけに、テレビ番組のタモリ倶楽部さんからお話をいただいて、テレビで僕の作品が紹介されたんです。

ジオラマ専用に作られた棚はいつでも中のジオラマを入れ替えることが可能です
▲ジオラマ専用に作られた棚はいつでも中のジオラマを入れ替えることが可能です

もしかすると、ジオラマから幼少期の夢だった“特撮”の世界に繋がっていくという展開があるではないでしょうか?!

以前から話はあったりするんですが、なかなか上手くいきませんね。ジオラマが僕の本職だと思われてる方が多いのですが、実際は違います。本業は工業デザイナー。

ジオラマは、アフターファイブを使って制作していますので、スケールが大きい特撮はなかかな難しいのが現状ですね。ただ、色々な経緯を経て、来年には念願だった作品集を出版することになっています。

27歳の時に受賞した作品の制作の様子をご自身で描かれたイラストで紹介!
▲27歳の時に受賞した作品の制作の様子をご自身で描かれたイラストで紹介!

情景師の自宅へ潜入 緻密な作品を作り出す荒木さんはどんな家に住んでいるのか

ジオラマとか模型とか作品自体は見てたりするんですけど、制作者が普段どういう家で、どういう生活をしてるのかは知る機会が少ないので、今日はものすごく楽しみにしていました。荒木さんのご自宅、素敵ですね。わざとらしくないと言いますか。うらやましい限りです。

ありがとうございます。もちろん今回の取材にあたって、片付けはしてますよ(笑)。けど、あまり片付けすぎても、わざとらしくなっちゃいますよね。実は僕、カミさんとも僕のプラモデルをきっかけに繋がって結婚してるんです。彼女自身もそういう世界感が好きなんです。僕の趣味丸出しで、彼女は我慢してるなんて無理ですよね。彼女とは感性が似てるんだと思います。二人で気に入ってる物とか好きな物を並べて置いてると。それでバランスが取れてしまって、客観的に見ても面白いですよ。

一時期はインテリア雑誌の取材が多く来ていたので、何も置かないように殺風景な部屋にしてました。だけど、そういう空間だど、だんだん自分たちの生活とのギャップが出てしまったんです。そこで“趣味の人の家”みたいなインテリアへシフトしていきました。僕は元々はアンティーク調が好きなんです。リビングの床は次第に飴色になるよう節目がある杉板をわざわざ選びました。今はもうイイ感じの飴色になって、傷もいっぱいついて自然になってきました。観葉植物も良い感じで茂っています。ガーデニングも好きだし、骨董集めるのも好きです。最近だと、カミさんと一緒に民芸品の収集にハマっていますね。

ベランダに植物がたくさん !
▲ベランダに植物がたくさん !
よーーーく見ると・・・!
▲よーーーく見ると・・・!
中央の木偶はアイヌの民芸「セワ」
▲中央の木偶はアイヌの民芸「セワ」
縁起のよい招き猫と、これまた縁起のよいタコ(多幸)を組み合わせた民芸
▲縁起のよい招き猫と、これまた縁起のよいタコ(多幸)を組み合わせた民芸

公園と言っても、子どもがいる時間にはやれないから夜中にやるんです。夜な夜なコソコソと公園まで行って、暗がりの街灯の下で様々な部品を塗装する。すぐには乾かないので、しばらく公園で乾燥待ちしているんですよ。ベランダでタバコを吸ってるホタル族みたいな感じ(笑)。僕も昔は、気を遣ってベランダに段ボールで塗装ブースを作り、そこで塗装したりしていました。

皆さん苦心しながら作品作りに勤しんでいらっしゃるんですね(笑)。

リビングで塗装作業ができる方がいたら、その人は相当幸せ者ですよ(笑)。

これからどんどん寒くなってきますし、公園モデラーの人たちには厳しい季節になりますね(笑)。

おっしゃる通りです。僕の倉庫ですら、1階なので2階のリビングよりもちょっと寒いですから。僕は、以前から家の2階にリビングを作りたいなと思っていたんです。「絶対リビングは2階に作って、で、2階はバーン!と吹き抜けが良い」、そんな感じで建築家にオーダーしました。リビングで、もう全てが事足りちゃいますね。この家を建てて5年ぐらい経っているんですけど、建設前に“アイコン”みたいな家にしたいと考えてました。

「三角屋根で小さい窓がひとつだけある」みたいな。ちなみにうちは三方向を、ぐる~と周りの家に囲まれているんです。窓を開けたら、隣りの家の人が「コンニチワ~」なんて嫌じゃないですか(笑)。だから、その点に配慮して周りから見えないように窓を作りました。近所の方には「窓がない倉庫みたいな家だけど、どうやって生活しているんですか?」と聞かれてしまいましたね(笑)。ちゃんと窓はあるので、陽の光はさんさんと入ってきますよ。


ジオラマ制作だけではなく、お家作りにもこだわりのある荒木さん。 次回は荒木さんのご自宅の紹介を中心に、秘密の仕掛け、荒木さんの“基地”である倉庫部屋、そしてジオラマディスプレイのコツをご紹介します!

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