中古住宅を購入し、住まい手のライフスタイルにあった形にガラリと変える「リノベーション」。この連載では「施主目線」に立ち、リノベーションでなければならなかった理由やパートナーを選んだ基準、そしてこだわりポイントを掘り下げます。
今回は、東京都大田区で奥様と2人の娘さんと暮らす704さんに、広々と開放的な2LDKにリノベーションされた経緯や今の暮らしの魅力についてたっぷりとお伺いしました。『ガランとした倉庫のような空間に憧れていた』と語る704さん。どのような住まいを手に入れられたのか、さっそく見ていきましょう。
今回教えてくれたユーザーさん♪
そもそも家探しをしようと思ったきっかけは何ですか?
「いつかはマイホームを購入したいとは思っていたのですが、2人目の子供が生まれたことが踏み切る一番のきっかけとなりました。(当時住んでいた家が手狭になったこと、そして壁が薄かったため子供の騒音で近隣からクレームが出るなど問題もあったのです。) またもうひとつ、DIYが趣味なのですが、壁や床をいじれないことにストレスを感じていたのも理由としてあります。」
どうして、リノベーションじゃなければダメだったんですか?
「『ガランとした倉庫みたいな空間での暮らし』に憧れていました。そのため、この理想を叶えられるのなら『どうしてもリノベじゃなきゃダメ!』というほどの強い想いがあったわけではありません。新築でも中古でも条件に合う物件を見つけて、そのまま住めればそれが一番良いとさえ思ってました。(そのほうが手間もかからないですし……。) ただ、色々な物件を見て回ってみたのですが、『住みたい』と思える物件にはなかなか巡り会えませんでした。既存の住宅の細かく区切られた部屋割りや味気のない壁紙、わざとらしい装飾などマイナス面ばかりに目が行くようになってしまい、自然と『中古物件+リノベ』という方向に傾いていきました。」
リノベーションの情報や依頼先は、どうやって探しましたか?
「Webと雑誌で得た情報を元に3社ほどに絞り相見積もりをとりました。 (リノベ専門、解体専門、解体+施工の3社です。) 元々はリノベの専門会社に丸ごと依頼しようと思ったのですがプランもコストも合わず。よくよく考えると自分がやりたいことは壁を取ったり、壁紙や床を剥がしたり元々あるものを「減らす」方向だなと思い、解体業の方に声掛けしてみたのですがこれが当たりでした。 最終「解体+施工」の会社に決めました。決め手は見積もりと丁寧な対応です。キッチンやフローリング、遮音マットなど部材はほとんど施主支給、施工と業者仕入れの方が安い部材についてはおまかせというように、細かいやり取りも嫌がらず丁寧に対応してくださったところが自分には合いました。」
実際にできあがった家を見たときは、どう思いましたか?
「思った以上に広く感じました。
LDKはリノベ前、キッチンに壁があり和室もあったため光が遮られ暗かったのですが、全て取ったので光が部屋の奥まで届くようになり、一気に開放的になりました。
川沿いで窓の外が抜けているのと、フローリングを正面の窓へ向かって縦方向に張ったため体感的な広さも加味されていると思います。
引越し当初、前の家で使っていた小さいダイニングテーブルを窓際に置いて食事をしていました。でも、スペースが空きすぎてなんだかヨガスタジオの休憩所にいるような感じに……。
遊びに来る人からはとりあえず『広っ!』と言われますね。」
特に気に入っている場所はどこですか? 5つ教えてください
①こだわり抜いたスケルトンのダイニング&キッチン
「ダイニングテーブル&キッチンは、家族が一番多くの時間を過ごす場所になるためこだわり抜きました。テーブルは食事以外に色々な作業に使えるよう広めにオーダー。吊り棚はスケルトンにした天井のアンカーにネジ棒を差込み、足場板を棚板にして見せる収納にしています。キッチンはプロが使うピカピカのステンレスキッチンに憧れて、Web(エクレア)で購入し施主支給。コンロはリンナイ、食洗機はハーマン、シンク下の収納は無印良品をセレクトしました。」
②心地よい奥行きをつくる、床と天井
「フローリングには、本当は足場板を敷きたかったのですが、素足で生活するにはさすがにきついと思い、同じ杉素材で幅広のフローリングを探し施主支給しました。 天井は、光の差し込みを考慮し、窓から遠いほうは暗くならないように白に、窓へ向かうにつれRCむき出し+クリアとなるように分けて塗ってもらいました。」
③ざっくりインダストリアルな、電器設備類
「配線類は全て鉄管に収納しています。また、スイッチ・コンセントプレートも意識的に金属製のものを選びました。雑誌などを見ながら『こんな感じで』とオーダーしたのですが、ズバリ希望通りに仕上げていただけました。」
④雰囲気を途切れさせない工夫が効いた脱衣所
「部屋の雰囲気に合わせて、脱衣所も無垢フローリングとスケルトンの天井を採用しています。光を取り込みたかったので、跳ね上げ式の内窓をオーダー。(本当は透明窓にしたかったのですが、それは妻に反対されすりガラスに収まりました。)ドアは杉板の吊り戸を造作してもらいました。」
⑤居室とナチュラルにつながるウッドデッキ
「眺望が良いので『ベランダをもっと活かしたい』と思いウッドデッキを作りました。 思っていた以上に良いです。視覚的にも空間がより広々としますし、素足でふらっと出られるので、部屋が一つ増えたような感じもします。夏、花火を見ながら、ここでビールを飲むと最高です。」
リノベーションを振り返ってみて、いかがでしたか?
「【良かったこと】
ベタですが、家にいる時間が長くなりました。前に住んでいた家は日当たりが悪く、狭かったため休日に一日家にいるのがしんどくもありました。でも、今は部屋に差し込む陽の光を、ぼーっと眺めているだけでちょっとした幸せを感じられます。子供たちも家で走り回ったり、ハンモックをブランコにして遊んでたり、以前より外に出たがらなくなりました。笑
【大変だったこと】
マンションの事情でバスルームと脱衣所は、暮らしながら2年越しでのリノベとなったことです。隣接するキッチンの冷蔵庫や吊り棚を一時撤去したり、お風呂も銭湯に通ったり、子連れにはなかなか大変な期間でした。また施工の職人さんにしても、朝来ては養生し、帰りには養生を剥がして掃除して、と多くのお手間を取らせてしまいました。お風呂自体も工期を優先しユニットバスにしたのですが、位置がちょうどRCの構造壁の部分だったので、入居前だったら壁を活かしたざっくりお風呂を造作する選択肢もあったかな……とも思います。
結果的に、『こうしておけばよかった』という後悔はないです。ただ、フローリングに選んだ杉材はとても柔らかいので、すぐ傷がつきます。わが家ではそれも経年変化による味になると考えてますが、選ばれる際にはこうした点も考慮した方が良いです。
今後、子供が大きくなったら現在の寝室を子供部屋にし、空いている小部屋を夫婦の寝室にするつもりでいます。その際は、ドアを引き戸にしたり間仕切りを付けたりと、色々変える予定です。なるべく光は遮らないよう、すりガラスを使いたいのですが、年頃になった娘たちに反対されるかもしれませんね……笑。」
お話をお伺いして
704さんは、リノベーションという選択肢を選び取ることで、憧れていた『ガランとした倉庫のような生活空間』を手に入れることに成功されています。ただガランとしているのではなく、自然と奥行きを与える床と天井や、光を生活の隅々にまで行きわたらせる工夫が凝らされているので、そこには確かな心地よさが存在しているのが特徴的。むき出しのコンクリートや杉材、インダストリアルな電気設備、植物、日常の品々、あるものすべてのカタチが美しく見えるのも、そうした丁寧なこだわりがあるからこそではないでしょうか。
また、704さんは『大変な部分でもあった』と語られていますが、未完の状態で入居することができるのも、リノベーションならではのメリットです。住まいができ上がっていく工程を、より身近に、リアルに感じられれば、家への愛着もぐんと増しそう。リノベーションという手段には、それを選ぶ人と理想の数、もしかするとそれ以上の可能性が秘められているのかもしれませんね。
704さんのお住まいについて
- 所在地: 東京都大田区
- 物件種別: マンション
- 建築面積: 93平米
- 間取り: 2LDK
- この家に住む人: 4人
- 施工期間: 1ヶ月(お風呂は後日別途リノベ。2週間ほど)
- 総費用: 680万円(うちバスルーム・脱衣所が250万円。DIYでつくったキッチンの棚やウッドデッキなどは除く)
- 設計: (株)SOU開発
704さんはご紹介した他にもRoomClipに素敵なインテリアを投稿していらっしゃいます。ぜひご覧下さい!