街には色々な野良猫たちのコミュニティがあり、それぞれが思い思いに個々若しくはグループ(家族?)で行動している。その中でもうちの近くに住んでいる“山中さん(猫)”と懇意にさせてもらっている僕は、暇があると、山中さん(猫)に会いに出掛ける。もちろんご飯を持参するようなことはしない。山中さん(猫)と僕は対等なのだ。「あんた(僕)、あの子たちは元気か?」山中さんはまだ見たことのない、うちの子(猫)たちをいつも気にかけてくれる。「はい、元気か元気じゃないかと言われると、元気だと思います。」「そうか、あんたはいつも気になる風な言葉を選ぶよな。」新宿のゴールデン街にそのまま置いてきても違和感の無い風体の山中さんは、もしかしたら僕にイライラしているのかもしれない。遠くで踏切りの警告音がしている。「山中さん、そろそろ僕の家に来ませんか?」何回目だろう。僕は山中さんを誘ってみた。「あんたの言うその“山中さん”というのは何かよくわからないが、もし俺のことだとしたら気持ちだけ受けとるよ。」猫の世界には名前が無い。名前という概念がそもそも無いのだ。僕は、便宜上“山中さん”と呼んでいるその老猫の寝床に、使わなくなったブランケットをそれとなく敷き、今日も別れを告げた。
街には色々な野良猫たちのコミュニティがあり、それぞれが思い思いに個々若しくはグループ(家族?)で行動している。その中でもうちの近くに住んでいる“山中さん(猫)”と懇意にさせてもらっている僕は、暇があると、山中さん(猫)に会いに出掛ける。もちろんご飯を持参するようなことはしない。山中さん(猫)と僕は対等なのだ。「あんた(僕)、あの子たちは元気か?」山中さんはまだ見たことのない、うちの子(猫)たちをいつも気にかけてくれる。「はい、元気か元気じゃないかと言われると、元気だと思います。」「そうか、あんたはいつも気になる風な言葉を選ぶよな。」新宿のゴールデン街にそのまま置いてきても違和感の無い風体の山中さんは、もしかしたら僕にイライラしているのかもしれない。遠くで踏切りの警告音がしている。「山中さん、そろそろ僕の家に来ませんか?」何回目だろう。僕は山中さんを誘ってみた。「あんたの言うその“山中さん”というのは何かよくわからないが、もし俺のことだとしたら気持ちだけ受けとるよ。」猫の世界には名前が無い。名前という概念がそもそも無いのだ。僕は、便宜上“山中さん”と呼んでいるその老猫の寝床に、使わなくなったブランケットをそれとなく敷き、今日も別れを告げた。