「盆栽のあるお家」コンテスト開催記念〜盆栽家/山田香織さんインタビュー〜

「盆栽のあるお家」コンテスト開催記念〜盆栽家/山田香織さんインタビュー〜

日本屈指の盆栽郷とされる埼玉県大宮市内盆栽町。その一角に門をかまえる清香園(せいこうえん)は創業150年。彼らの歴史は、なんと江戸時代にまで遡るそうです。約一世紀半にわたり盆栽の伝統を受け継ぎ、その魅力を多くの人たちに見せてくれています。今回は12月からRoomClipで開催されている「盆栽のあるお家」の写真投稿コンテストを記念して清香園の女性盆栽家、山田香織さんにお話を伺いました!

盆栽職人の町“盆栽町”が生まれた経緯

ー早速ですが、インタビューを始めさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。

ー清香園さんがある盆栽町は、盆栽職人の方が多く集まる街ということですが、どのような経緯で、そのような土地になったのですか?

話は江戸時代まで遡ります。当時の江戸、今でいう東京という街には、多くの盆栽職人や植木職人が住んでいました。江戸時代以降、工業化を進んでいく中でも活躍していた職人たちでしたが、明治大正時代以降、「東京郊外の地域に自分たちの居場所を求めたい」と考えるようになっていったそうです。

その矢先、関東大震災が起こりました。それが直接的なきっかけとなり、多くの盆栽職人たちが集団でこの街(埼玉県大宮市内)に引っ越してきたのが“盆栽町”の始まりです。東京下町にあった清香園は、関東大震災時は自由が丘へ移り住み、昭和18年にこの土地にやって参りました。それから現在まで、この土地で盆栽業を営んでおります。

▲多くの盆栽園が点在する盆栽町はのどかな雰囲気
▲多くの盆栽園が点在する盆栽町はのどかな雰囲気
▲清香園の園内
▲清香園の園内

ー盆栽は同じ植物でも、鉢植え植物とは一線を画していると思います。山田さんが考える盆栽の魅力を教えていただけますか。

盆栽には自然風景そのものが凝縮されているんです。それが他の鉢植えと大きく違うところだと私は考えます。そして、ひとつひとつの鉢を大事に大事に育てていくんです。5年、10年、20年、なかには寿命が100年を越える鉢もあります。盆栽を大切に想い、育てて、慈しむ。感覚的には、“ものすごく長生きするペット”といった感じかもしれませんね。もちろん盆栽は植物なので、四季を感じることもできます。春の新緑、夏の緑意、秋の紅葉。そういう意味でも、盆栽の楽しみは色々とありますね。

盆栽も他の植物と同じく、水と太陽の光で生きています。実は、盆栽の育て方で間違った認識を持たれている方が多いです。鉢が小さくてか弱く見えてしまうのか、家の中で育ててしまう方がいらっしゃるんですよ。室内では光合成が不十分になり樹勢が弱くなってしまいます。水のあげ方に関しても、霧吹きで水をあげてしまうなんて方もいらっしゃいますが、それでは充分な水分が行き渡らないので、すぐに枯れてしまいますね。また、鉢の受け皿に必要以上に水を張ってしまい、根腐れさせてしまったという方もいらっしゃいます。誤解したまま育てると、盆栽はすぐに枯れてしまう。基礎知識を持って、盆栽と接していただければ、長く楽しんでいただけると思いますよ。

ー鑑賞用である以前に、まず“植物である”という認識が重要なんですね。

そうですね。盆栽が好む環境を整えてあげることが大切です。人間が勝手に解釈したものではいけませんね。例えば、犬を飼い始める時も「子犬には何を食べさせればいいんだろう」なんて調べたりすると思うんです。最低限の知識を整えていただければなと思っております。

ベランダでも育てられる盆栽

ー広いお庭を持たれていない方でも、盆栽の飼育はできるものなのでしょうか。例えば、「日当りがいまいちなベランダでも盆栽をやってみたい!」と思っている方もいると思います。そういった方へ何かアドバイスはありますか?

そのような環境でも盆栽を育てることはできます。まず、木の種類を選択することは重要です。環境に関してのアドバイスですが、盆栽は湿り気を好みます。ウッドデッキなどは最適ですね。じかにコンクリートの上に置いてしまうと、すぐに枯れてしまうので、ベランダがそんな環境の場合、防腐加工のされた木箱や簀の子の上に置いたりするのは効果的ですよ。購入時にお店の方によく相談された方が良いかと思います。色々とアドバイスしてくれるはずです。「日照時間が◯◯時間しかないけど、大丈夫ですか?」なんて聞き方でも大丈夫です。

ベランダで育てる場合には、季節によって、置く場所を変えたりするなどの工夫を凝らす必要はあります。鑑賞するために室内に飾る場合の期間は三日以内。冷暖房の風に直接当ててはいけません。例えば、“週末は室内に飾って、平日はベランダに置く”、そんな形が理想的かもしれませんね。もっと理想をいえば、最低でも5~6鉢持って、ローテーションで飾っていくのが良いですね。その方が木にも負担が少ないです。

ーこれから盆栽を始めようと考えている方に、何かおすすめの種類はありますか?

“楓”と“紅葉”がお勧めです。平地での栽培に向いていますし、季節を感じやすく、育てがいがあると思います。上級者ともなれば、“実”がなる種類を育てる方もいらっしゃいます。松などは針金を使って、樹木の形を整えたりもするんですよ。

▲紅葉した盆栽で四季を感じられます
▲紅葉した盆栽で四季を感じられます

ー実際にいくらぐらいから始められますか。

安いものですと、5000円ぐらいですね。花束を買うような感覚で始められます。ただ、盆栽を始めるにあたって、基礎知識は非常に重要だと考えます。何らかの手引きは必要なので、参考書などで勉強していただければと思います。清香園でも、盆栽教室をひらいておりますので、興味があれば是非ご参加いただきたいですね。

お家でお花見を楽しむ” 盆栽の楽しみ方

ー盆栽教室ではどのようなことを教えていらっしゃるんですか。少しご紹介ください。

彩花(さいか)盆栽教室というワークショップを開催しています。初心者向け、上級者向け、色々なコースがあります。もちろん伝統的なことを教えておりますが、盆栽を現代風にアレンジしながら楽しむ方法も提案したりしています。参加者の9割が女性です。「子育てがひと段落してきたので、ゆっくり植物と向き合うのが楽しいんです」なんて生徒さんも多くいらっしゃいますね。

私は、最低でも1日に1回は盆栽に水をあげにいきます。それが私の楽しみなんです。彼らをほったらかしにしていたら、愛着も湧きませんし、愛情も移りません。接することを怠っていたら、生き物と関わることはできませんね。

盆栽も植物、観葉植物も植物、園芸も植物。それぞれの違いがありますが、植物と関わっていると、なんとなく植物に対しての“勘”が働いてきます。「こういう風に接すればいいのかな?」って。花の名前をひとつわかるようになるだけも楽しい。植物と触れ合うのは本当に楽しいですね。

ーこれから盆栽を始める人に向けて、山田さん流の盆栽の楽しみ方、そして、現代ならではな“アレンジした楽しみ方”などはありますか?

いま、人気があるのは“桜の盆栽”ですね。「お家の中でお花見をしましょう」という感覚で、私はご提案しています。お花見の季節って、実際はまだ寒かったりしますよね。私自身、初めの頃は良いのですが、どんどん身体が冷えてきて、いまいち楽しみ切れていなくて(笑)。なので「温かいお家の中でお花見しましょう」というご提案です。盆栽を使ったホームパーティのような感覚ですね。木が小さくてもお花が咲くタイプもありますので、とてもお勧めしているんですよ。

ーオリジナルの鉢や盆栽を作られているそうですが。

“彩花”(さいか)というオリジナルブランドを展開をしております。盆栽のモダンな楽しみ方、カッコいい可愛い楽しみ方、現代風な楽しみ方を提案をしています。例えば、比較的、四角い鉢であったりとか。モダンな雰囲気と日本の雰囲気を合わせた盆栽を作っていますね。

ー清香園さんには珍しい盆栽も数多くあると聞きましたが、ご紹介いただけますか。

一番古いもので樹齢400年を越える盆栽もあります。盆栽の中には、美術価値が高い個体も数多くあるんです。絵画と同じような扱いと思っていただければと思います。そちらは撮影をご遠慮いただいてます(笑)。

▲奥には樹齢400年を超える貴重な盆栽達も※当日は特別に全景の撮影をさせていただきました
▲奥には樹齢400年を超える貴重な盆栽達も※当日は特別に全景の撮影をさせていただきました

ーでは、最後に“盆栽の飾り方”などのアドバイスもあったら教えてください。

盆栽のまわりはシンプルな景観にしてください。鉢の下に木板などを敷いていただき、背景はなるべくシンプルにしていただいた方が良いと思います。盆栽は、ものすごく繊細なんです。まわりがガチャガチャしていない方が良い。昔は床の間に飾っていた物ですから、飾る時はまっさらな壁の前に置かれた方が映えてくるんです。あと、歳時記に合わせて、それに因んだ植物で盆栽を楽しむのも面白いですね。ひな祭りは桃や桜、七夕は笹、秋は紅葉など、季節を楽しむのは日本人の感性や文化だと思っています。大切にしたい感覚ですね。

盆栽はお家の中にある自然への入り口、アウトドアへトリップする入り口です。ちょっとミステリアスな印象であるべきだと考えます。そんな盆栽ですが、是非、みなさんのお家にも取り入れてくれたら大変嬉しいです。インテリア好きな人は、盆栽にハマると思うんですよ。私自身もインテリアが大好きなのですが、自分が思い描く理想のお部屋を作り上げるのは、一朝一夕にはいかないですよね。盆栽もまさに同じなんです。図画工作のような一面もあって、自分が描いた設計図を元にコツコツと少しずつ手を加えながら、理想の形に近づけていく。それが納得のいく形になってくれた時にはとても嬉しいです。まして相手は生き物ですから、彼らとコミュニケーションが取れているような感覚さえ覚えることができますよ。


単なる飾りではなく、生き物として盆栽と向き合う。 そういった時間を楽しむことで豊かな生活や空間が生まれるものなんですね。山田さん、ありがとうございました!
また、今回お邪魔した盆栽町には「さいたま市大宮盆栽美術館」があり、多くの貴重な盆栽を鑑賞することが可能です。 季節に応じた展示も随時開催されているので、盆栽町を訪れた際は、是非足を運んでみて下さいね!

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